祖父の代から続く野菜農家の娘です。
両親とともに露地栽培で野菜を作り、家計を支えてきました。
私は関東の大学に進み、卒業後は一般企業へ就職しましたが、無理がたたって体調を崩して帰郷。実家の手伝いをするうちに、高齢なのに働き過ぎな両親を見かねて、就農を決意しました。
しかし、実際に農家になって気になったのが、男性優位の風潮です。
土地柄の影響があるかもしれませんが、組合や地域のイベントは男性が主体で、女性が口を挟むことができません。
農業の未来を考えても、女性がもっと活躍できるようにならないものでしょうか。
具体的には、役員に女性枠を設けて、積極的に登用してほしいと願っています。
女性は裏方担当という意識を変えたいので、女性が活躍している地域はどういう取り組みをして、男女平等に活躍できるような体制をつくったのか知りたいです。
(鹿児島県・石川さん/仮名・30代)
小川繁幸
東京農業大学 准教授
法人化して女性経営者としてアピール!ネットとメディアを活用しましょう
農村には古い慣習が多く残っています。
組織に女性部や婦人会の存在はあっても、組織の活動に主体的に関わることは難しいといえるでしょう。
地域の担い手は減っているのに組織のトップが女性であるのを見たことがありません。
行政では女性首長も珍しくないなか、とても違和感を感じています。
生半可(なまはんか)な努力では、女性の地位向上など叶わないのが今の農村の現状だと思います。
外からも内からも、組織体質の変化を図り「女性は地域のなかで無視できぬ存在である」と知らしめなければなりません。
質問者さまは、ご両親のもとに就農されたということですが、まだ「未熟な跡継ぎ」としか見られていないのかも知れません。
「経営移譲を受けて初めて一人前」というのが、よくある認識です。
地域で女性が活躍するには、農家として認知される環境づくりが欠かせません。
個別農家としての実績を重ねつつ、民間企業勤務の経験やノウハウを早い段階から活かすために、法人化するのはいかがですか?
社会的な組織人格を持った農業経営体だと地域に意識させることは非常に有効かと思います。
ご両親とともに法人化するのも一案です。
担当作物を分けるなどして、ご両親と別の生産部門を設けて、法人化するのも良いでしょう。
女性農業者の活躍を見ると、地域で強い発言権を持つ方は女性社長として農業生産法人を起業された方が多いと感じます。
立派に農業経営ができていれば、農協や地域の組織も一人の経営者=農家として対応せざるを得ないというわけです。
女性経営者は稀有な存在ですから、存在感をPRするのにマスメディアを活用するのも有効です。
日本中の同志と連携し、声を上げていきましょう。
オンラインが普及した今、小さな声も大きな声となり得ます。
個が集まったパワーは計り知れないと信じています。
きっとそれが地域変革の要になっていくことでしょう。