集落の漁協女性部のメンバーで、地元の魚を安く買い取り、加工して直売所などで販売しています。
今後、買い取る魚の種類を増やして、もっと売り上げを伸ばしていきたいと考えていますが、そのためには加工施設をもう少し拡大しなければいけません。
ですが、いまは仲間たちが集まって作業をしているだけなので、法人みたいな組織ではなく、そのため法人として契約することができないのです。補助金や融資もかなり限られたものになってしまいます。
そこで、みんなで話し合って法人にしようか検討しているのですが、有限会社、株式会社、合同会社など、どういった種類の法人にすればいいのかわかりません。
法人の種類が違うといろんな影響があると思うのですが、なるべく楽に運営できて、決算などの経理も比較的簡単にできる法人ってあるのでしょうか?
(鹿児島県・有村智恵美さん/仮名・50代)
三木奈都子
一般社団法人うみ・ひと・くらしネットワーク会員
まず合同会社からはじめて、状況次第で株式会社化してみてはいかがでしょう
有限会社は、日本で過去に設立が認められていた会社形態の1つですが、2006年5月1日の会社法施行に伴い根拠法の有限会社法が廃止され、それ以降、有限会社の新設はできなくなっています。
そのため合同会社と株式会社を比べてお示しします。
合同会社は、2006年5月1日施行の会社法により新しく設けられた会社形態で、経営者と出資者が同一であり、出資者全員が有限責任社員(自分が出資した分だけ会社に責任を負う社員)であるという2つの特徴があります。
詳細の説明は省きますが、合同会社のメリットは設立費用が安いことやランニングコストを抑えられること、経営の自由度が高いことです。
経営の自由度については、例えば出資比率に関係なく利益配分が可能なので、優秀な社員の利益配分比率を高めるということも可能です。
役員の任期がなく、決算公告の義務もありません。
また、定款内容の自由度が株式会社より高いため、個々の事情に応じた定款を作成することができます。
こうした合同会社ですが、デメリットもあります。
株式会社と比べて企業と取引する場合に信用度を低く見られたり、人材募集の際に人材が集まりにくかったりすることも考えられます。
一方、株式会社は、株式を発行して資金を集めて作られる「会社」の代表的な形態です。
株式会社の主なメリットは、社会的認知度が高く、また、合同会社と比べて守らなければならない法律の規制が多いため社会的な信用が高いことです。
人材採用の募集や金融機関からの融資など、さまざまな面で合同会社や個人事業主より有利です。
主なデメリットは、設立時の費用が合同会社設立に比べて高いこと、毎年決算期ごとに決算の数字を公表することが義務づけられていることなどです。
どちらにしても、漁協女性部のように代表者が順繰り変わっていくものではなく、代表者が責任をもってとりまとめていくことが求められますので、その点は代表者のそれなりの覚悟が必要です。
法人化したい、でもよくわからない、お金もそんなにかけられないということであれば、まずは合同会社を立ち上げ、状況次第で株式会社に移行するのはいかがでしょうか。
実際の漁村女性起業グループでも当初は合同会社でしたが、従業員に社会保険をかけられるようなしっかりとした地域企業になりたいと、途中で株式会社化した事例があります。
実際に法人化した組織の代表者などに話を聞きに行くと安心できるのではないでしょうか。
是非、小さく産んで大事に育てて大きく展開していただきたいと思います。勇気をもってがんばってください。