京都府で米づくりをしている農家です。規模は100アール程度ですが、こだわって米を作っています。
裏作では麦を栽培していて、肥料のほとんどを堆肥を使いながら栽培しています。
今年も鶏糞を畜産農家に撒いてもらい、栽培をはじめようとしていたのですが、撒いてもらった鶏糞が生の状態でした。
このままでは、土壌障害が起きてしまうかもしれません。
過去にもガスが発生したり、生堆肥を分解しようと、土中の窒素分が奪われてしまうなどの事象も起きていました。
生の堆肥を撒いてしまった場合、取るべき対策や後処理はあるのでしょうか?
(京都府・頼野さん/仮名・50代)
石井佑治
ねごやファーム/有限会社石井金原養鶏
小まめに耕耘を行い、土に混ぜ込みましょう
神奈川県相模原市で、厳選された飼料を使って養鶏をしながら、その鶏糞を発酵させて安全安心な野菜作りを行なっています。
私たちも未熟堆肥を使ったことがないので、何とも言えませんが、未熟な堆肥を撒いてしまって、早く作付けをする場合、作付けをするまでの間に1週間くらいの間隔で小まめに耕運すると良いかと思います。
なぜなら、可能な限り土に混ぜ込むためです。ご相談者さまが作付けした後の経過を知りたいので、その情報を伝えていただけると幸いに思います。
鈴木雅智
ブロ雅農園
半年以上、放置するか、太陽熱消毒または緑肥の活用という方法があります
こんにちは。神奈川県の三浦半島で100品種の野菜を栽培しているブロ雅農園の鈴木です。
生の鶏糞とは災難でしたね。しかし、全国でも実際に似たようなトラブルはあるようです。
可能なら、水を張ってある程度、水を流して取り除くのがよいでしょうが、なかなか現実的な話ではないと思います。
取り除くのが不可能な場合は、選択肢は決まってきそうですね。ちょうど似たような話を農業普及所の方とお話ししたばかりなので、参考にしていただければありがたいです。
まず、量にもよりますが、一番良いのはその畑を半年~1年間放置して雑草などに吸わすという方法です。分解してしまえば問題はないので放置することが可能な農地なら最も手間がかからず簡単です。堆肥の量が多すぎる場合、3年間置いても発芽率などが悪くなるという話もありますから、限度はあるかもしれません。
いや、そんなに待っていられないという場合には、2点提案があります。
1.太陽熱処理
まず、時期ですが、春~夏の場合なら、微生物資材を投入して畑全体を発酵させるという方法があります。真夏を挟んでいるならなおさら発酵が早まります。
さらに、手間がかかってよいなら、太陽熱処理という方法があります。
わが家では、毎年、7月~8月にわざと生っぽい堆肥を入れ、透明のビニールで被覆して(=マルチング)、約1カ月にわたって太陽熱消毒を行います。
そうすることによって、連作障害や病気を抑える効果もあり、よりよい土づくりになります。ちなみに、わが家ではこの方法で40年間連作で露地のメロンを栽培しています。
手間はかかりますが太陽熱処理は非常に効果的ですのでおススメです。畑全面をマルチングするため、マルチャーがないと厳しいかもしれません。
2.緑肥の活用
または、ソルゴーなど緑肥を使い、土壌改良をすると割り切ってしまうのもオススメです。
緑肥を栽培しますので長い期間がかかります。その年のこの畑の収入は無くなってしまいますが、翌年は土壌の改善が期待できるので、よりよい収量が期待できます。
栽培した緑肥をすき込んで利用してもいいですし、窒素を吸い上げさせて畑外へ持ち出して処分するという方法もとれます。
◆どうしても何か作りたい場合
しかし、収入的にも何かしら作らなければいけない、という状況の場合、難易度は上がりますが、私が聞いたことあるのは、葉物が比較的おすすめです。ある程度の対策の後、1シーズンは、簡単な葉物で乗り切ったという方もいるようです。
しかし、窒素飢餓や土壌障害のリスクを考えるとあまりオススメしません。
私なら、リスク回避で緑肥を使用して、半年は土壌改良と割り切って、その後から栽培を行う方が安全で現実的かなと思います。