島根県で農家をしています。現在は9ヘクタールの規模で米とブロッコリー、小麦を作っています。
今年、近隣の市でハクチョウによる小麦の食害があったとニュースで見て心配しています。
100羽ほどの群れが飛来して、伸び始めた小麦を食べたとのこと。
我々の地域では、毎年冬にはコハクチョウがやってきて、水場や田んぼにやってきます。
美しい景観で昔から親しみがあり、大事にしてきたのですが、まさかそのハクチョウが小麦を食べに来るとは思ってもみませんでした。
数年前にも別の市でハクチョウの小麦食害があったと聞きました。
田んぼで落ち穂を食べるものと思っていましたが、秋まきの小麦畑がハクチョウにとって新たな餌場になりつつあるのかも知れません……。
自分の麦畑でハクチョウが食べた形跡を見たことはありません。
近くの農家の間でも話題には上ったものの、地域で対策を取ろうという感じでもないです。
個人単位で何とかできる問題ではないかもしれませんが、それでも何か取れる対策があれば知りたいです。
(島根県・福永さん/仮名・60代)
山本麻希
株式会社うぃるこ/長岡技術科学大学准教授
ハクチョウは早めの対策が重要です。ネットや防鳥器具を設置しましょう
ハクチョウの被害は、一度彼らに目をつけられてしまうと結構な被害が出ると思われます。
ご相談者様の圃場ではまだ被害が見られないということですが、9ヘクタールの畑というとかなり広いので、早めに対策を取っておくことが重要です。
夜に鳥が休んでいる水辺の近くなど、一部の圃場に被害が集中している場合は、防鳥ネットの3面張りでしっかり覆ってしまうのがベストです。
広い畑全体に被害が出ていて費用対効果的にネットの設置が難しい場合は、防鳥器具を設置することをおすすめします。
ハクチョウの被害は昼間発生することが多いので、これまでに農地にあまり設置されていないタイプの忌避具を何種類か用意し、定期的に取り換えて設置するのが良いかと思います。
カモによる大麦の被害対策で、佐賀県でブラックフラッグというものを設置したところ、効果が見られたそうです。
高さ2メートル程度の農業用支柱に、50センチ×2メートルのマルチ用のビニールを張って、10アールに1本くらいの密度で立てておきます。
風のある日はそれがはためいて、カモがいやがるとのこと。ただし、これらの単純な忌避具ではおそらく鳥も慣れてしまいます。
被害を出したくない期間に、いくつかの忌避具を1週間ごとなどこまめに変えながら設置するのがベターです。
ハクチョウは法律上捕獲ができないので、以上のような防鳥ネットや忌避具の組み合わせが基本になります。
もし、農作業を始める前にロケット花火を打てるようでしたら、それで追い払う方法もあります。
猟友会が近くで狩猟をしている地域ならば、農家の人がオレンジのベストや帽子を着用して塩ビ管の筒からロケット花火を打ってみてください。猟師と誤認した鳥がかなり怖がって逃げるため、忌避効果は高いと思います。
このような方法でも慣れてしまい、被害規模が大きくてなんとか対策をしなければならないという場合は、レーザー照射装置など、コストは高くても忌避効果が高い防除器具もあります。
もし、どうしても効果が持続しないようでしたら、ご連絡をいただければと思います。