東京で独立就農して、4年目になります。
小さいながらも自分の農地でハウスを使用しない露地栽培をしています。
30代になったばかりで、まだまだ分からないことばかりです。
先輩方に教えて頂き、自分なりに試行錯誤を続けています。
最近の悩みのタネは、雑草の扱い方です。除草剤は使いたくないので、すべて早めに根こそぎ抜くようにしてきました。
しかし、あるとき先輩農家から「雑草は土を軟らかくしてくれる役割もあるから、根こそぎ抜いちゃいけない」と言われました。
また、別の先輩からは「スギナやカヤツリグサ、カタバミのような繁殖力の強い雑草は放置するな。根こそぎ抜きなさい」と教えていただきました。
さらに自然農法で作物を育てている人に話を聞くと「雑草はできるだけそのまま残している」と話していました。
教える人によって意見がかなり違うので、どうしたものか思案中です。
私はできれば雑草は抜きたいと考えています。そこで根こそぎ抜くかどうかの判断基準を教えてください。
とはいえ、雑草を抜かない自然農法も手間がかからないので魅力的ではあります。
もし実験的にやるとしたら、雑草と共生しやすい野菜を知りたいです。
(東京都・川名勝さん/仮名・30代)
豊田剛己
東京農工大学 農学研究院 生物システム科学部門 教授
根こそぎ抜くのがもっとも有効だが、抜かないメリットもあります!
いかに雑草の被害をなくすのか、これが農業で最大の問題であり課題です。もっとも有効な手段は除草剤を使うことですが、除草剤を使わないとなると「早めに根こそぎ抜いてしまう」ことがもっとも有効となります。
とはいえ、根こそぎ抜かないことにもメリットがあります。土壌に残った雑草の根は、やがて土壌有機物になります。
それによって土壌の団粒構造(土の塊の状態)が発達し、土壌を肥沃にしてくれます。
とはいえ、もし土壌の有機物含量を高めたいのであれば、堆肥の施用、緑肥のすき込みなどで同じ効果を得ることができます。雑草を残すのか、それとも根こそぎ抜くのかの判断は、この点を考えて判断するといいでしょう。
農地周辺の環境によって雑草を残す場合もあります。それは東京など住宅地が近接している都市近郊農地のケースです。
裸地にしていると、風で舞った土壌粒子によって近隣住宅の洗濯物が汚れる被害が出てしまいます。そのためにクレームが出ないように雑草を残して土壌表面を覆っておくことです。
こまめに雑草を取ると、そこが裸地になってしまいますので、土壌が風で周りに飛んでいかないよう、圃場の周りに背の低い樹木を植えたり、何か緑肥などを植えておくことが推奨されます。
北川清生
北川トマト
雑草は処理方法によって堆肥やマルチ、緑肥などの活用ができます
雑草は自然に生えているものなので、いろいろな活用ができます。私の場合は、「雑草を手で抜く」「草刈機で刈る」「ハンマーモア(ハンマーモアナイフ)で刈る」という3つの方法で雑草処理をしています。それぞれの活用法を簡単にご説明します。
まず「雑草を手で抜いた」場合です。抜いた雑草には土がついているので、堆積して堆肥をつくります。なぜかというと、土がついていると微生物がたくさんついているので、発酵しやすいからです。
つぎに「草刈機で刈った雑草」は、マルチとして使うのが良いです。収穫後にマルチとして使った草をすき込むことによって土づくりにつながります。
最後に「ハンマーモアという機械で刈った」場合です。ハンマーモアは雑草を巻き込んで細かく粉砕しながら刈り取っていく機械です。
この機械で刈ると草が細かくなるので、緑の絨毯を敷き詰めたようになりますので、できるだけ早く耕うんして緑肥として活用します。
このように雑草の活用は、処理方法によって「堆肥」「マルチ」「緑肥」として活用できます。野菜の種類等で対応策は違うと思いますが、できることから雑草の活用を始めてください。
そして、相談者さまが考えているとおり、除草剤はできたら使わないでください。除草剤は大切な土の敵です。私は24年間農業をしていますが、除草剤は一度も使ったことがありません。