高知県で、レタスを栽培しています。農家にとって雑草はとても厄介なもので、有毒なものや、つる性で機械に絡まって作業に支障をきたすものなど、さまざまな害を及ぼします。
よく生えている雑草は今までの経験から対処できますが、先日、レタス畑に見たことのない雑草が生えていました。
早めに対処しようと植物図鑑で確認しましたが、一つひとつ分厚い本をめくりながら該当の植物を探すのがとても大変で、雑草の種類を特定するのに1日を費やしてしまいました。
農家仲間にその話をしたら、最近はスマートフォンで写真を撮ると植物を判別してくれるアプリがあると聞き、早速無料のアプリを試してみました。
スマートフォンひとつで調べられるので便利ですが、アプリの情報量が少ないのか、判別できない雑草があったり明らかに違う植物と特定されたりと、精度が悪く正直使いものになりませんでした。
有料のアプリはお金がかかるため、片っ端から試す訳にもいかずためらっています。何かおすすめのアプリがあれば、教えていただけないでしょうか。
(高知県・佐久間さん/仮名・30代)
櫻井杏子
株式会社INGEN 代表取締役
アプリだけでなく、並行して辞書サービスの利用を!
画像診断の技術は現在も発展途上で、まだまだ情報量が少なく正確な判定ができない場面も多いかと思います。
理由としては、ひとつの病気の診断は、決して画像だけでなく、栽培背景(どんな畑で育ち、いつ・何をどのように施したか?)も病気を判断する重要な要素だからです。
私が代表を務める株式会社INGENでは、畑の栽培指導から処方・管理まで一括でできる農業管理アプリ「農の相棒Mr.カルテ」を開発しているのですが、やはり画像診断はとても注目している分野です。農業専門企業として、栽培背景の情報も重視した機能開発を心がけています。今後、画像診断の技術が発展していくことで、より使いやすいアプリが出てくることを私どもも期待をしています。
というと身もふたもない回答になってしまいますが、現段階でのおすすめの方法として、アプリと並行して辞書サービスも登録してみてはいかがかと思います。
中でも優秀なのは、ルーラル電子図書館です。ルーラル電子図書館の運営元は、現代農業や農業技術大全を出版する農文協(農山漁村文化協会)。それだけに情報量は他の比較にならないほど豊富です。
最近では、「雑草診断」や「ここ1カ月問い合わせが多い畑地雑草」、「要素障害診断」など、畑に居ながらも欲しい情報が即手に入れられるような機能が充実しています。
下村豪徳
笑農和 代表取締役
専門知識のある団体に相談すると、素早く解決できます
雑草というのは、いつの時代も農業者が頭を抱える悩みの種です。特に最近の異常気象と温暖化により、それまでその地域では見たこともなかった雑草が生息しているという事例も増えているので、ますます難しい問題になっているのではないでしょうか。
実際私のところにも、雑草が突然変異したようだという声が届いています。「除草剤の効きが悪くなった」というお悩みも、こうした雑草の突然変異に関係しているのかもしれませんね。
そのため、質問者様のように雑草をカンタンに調べられるツールをお探しの農業者さんは非常に多いのですが、残念ながら、まだこれが完璧ですと答えられるアプリは存在しないのが実情です。
現段階では、雑草に詳しい方々が所属する団体に相談されるのが最も早急に解決へ繋がる術でないかと思われます。
例えば「NPO法人 緑地雑草科学研究所」では、環境被害や社会的被害を防ぐために、2016年より雑草インストラクターを輩出しています。
人数もまだ少なく、各インストラクターの担当地域も限定的ではありますが、全国を担当している方もいるようです。こういった団体へ相談を検討してみてはいかがでしょうか。