新規就農して7年になります。
露地栽培で旬の野菜を生産しており、雑草対策のために黒マルチを使用しています。
しかし、先日グリーンや赤紫のマルチには地温上昇効果があると聞いて気になっています。
黒マルチと比べるとどのくらい違うのでしょうか?各種マルチの温度面での違いを教えてください。
周囲の農家でも黒マルチ以外では透明マルチや白マルチを使っている方が多い印象です。
グリーンや赤紫のマルチを使っている人のリアルな声が聞けないので相談させてもらいました。
(東京都・木下さん/仮名・30代)
新規就農して7年になります。
露地栽培で旬の野菜を生産しており、雑草対策のために黒マルチを使用しています。
しかし、先日グリーンや赤紫のマルチには地温上昇効果があると聞いて気になっています。
黒マルチと比べるとどのくらい違うのでしょうか?各種マルチの温度面での違いを教えてください。
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五十嵐大造
東京農業大学国際食料情報学部 国際食料情報学部(前教授)
マルチの色によって地温が変わる。季節や雑草防除の目的で使い分けます
一般的には厚さ0.02mmの薄いポリエチレンマルチが広く利用されています。
マルチには透明、黒、銀など多くの色のものがありますが、当然、地温等に与える影響は異なります。
マルチの働きを整理しますと、次の3点にまとめられます。
1.雑草防除
2.地温の上昇
3.その他 です。
まず、1の雑草防除については、光を通さない黒や銀が適しています。
透明マルチでは雑草対策にはならないのが普通ですが、トラクターに装着して耕運と同時にマルチを敷くと、土に密着した状態できれいに敷くことができますから、発芽した雑草はマルチに頭を抑えられ、やがて熱で枯れてしまうこともあります。
人の手でクワを用いながらマルチを敷くとどうしても隙間ができるので、雑草に悩まされることになるでしょう。
2の地温についてですが、その前になぜ薄っぺらなマルチを敷くと地温が上昇するのかを段階別に考えてみたいと思います。
日中、露地では日射によって地表が温められるのですが、その熱は高い方から低い方へ移動します。
地表面に届いた日射による熱は、次の3つに分配されます。
A)温まった地表面から、地表面よりも温度が低いマルチ上の空気へ熱が移動します。
B)温まった地表面からは土壌中の水分を蒸発させるために、熱を消費します(つまり気化熱を消費することになります)。
C)温まった地表から地中へと熱が伝わっていきます。
ところが、ポリエチレンのマルチを敷くと、土壌中の水分は蒸発できないので、Bで消費される熱は0となります。
Bが0の分、熱はAとCにより多く分配されることになります。だからマルチ下の地温は上昇するのです。
いろいろな色のマルチでも、地温が上昇する原理は同じです。定植したときにマルチに植穴を開けますが、植えた後は土でマルチの隙間をなくし、水分が蒸発しないようにすることが大切です。
一方、もともと日射を反射させる銀色のマルチでは、そもそも日射が地表面に届かないようにしているので地表面が暖まらないことになります。
色別による地温の違いですが、透明>緑>黒となります。透明と黒では地温の暖まり方のメカニズムが異なります。
透明では、日射はフィルムを通過してマルチ下の土に作用します。
一方、黒はマルチ自体が熱を吸収し、その熱がマルチ下の土に伝導していきます。
緑など色付きのものはその中間とみて良いでしょう。
透明と黒では具体的に何度とは言えませんが、それほど大きな地温差ではなく、数度程度です。
春先など、地温が上がりにくい時期なら、雑草対策を無視すれば透明を、もう少し暖かくなってくれば雑草対策もできるので黒を使用するのが良いでしょう。