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漁獲時期が本来の旬からずれて、たたき売り状態です。どんな経営をすればいい?

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漁獲時期が本来の旬からずれて、たたき売り状態です。どんな経営をすればいい?

長崎県でまき網漁をしています。アジやサバを中心にブリやカツオなども獲っています。

近年、海洋環境の変化を感じています。そのひとつが、魚の漁獲時期が本来の旬からずれてきているということです。

水温の上昇による影響なのか、はっきりとした原因は分かりませんが、以前と獲れる時期がずれているのは確かです。

そして、漁獲時期が本来の旬からずれている影響で、魚がたたき売りとなり、単価が下がっています。

魚の漁獲時期がずれてきている原因はなんなのでしょうか?

また、こうした環境の変化が起こるなかで利益を確保するためには、どのような経営対策をしていけば良いのでしょうか。
(長崎県・佐伯一馬さん/仮名・30代)

馬場 治

東京海洋大学名誉教授

鮮魚専門店やネット販売、加工原料としての販売など従来の販路以外のルートを探しましょう

今日では、消費者が鮮魚を購入する場所の7割近くが量販店だと言われています。

量販店は、店舗の棚作り(売り場作り)として、魚の旬に応じた品揃えを行います。

例えば、カツオは3月頃に「初鰹」として売り出し、その後5月のゴールデンウィークごろに、カツオから「マグロ」などに切り替えます。8月に入ると「秋のサンマ」を売り出し、サンマが一息つく9月末ごろからは「戻り鰹」、年末には「マグロ」や「ブリ」などといった販売カレンダーが組まれることが一般的です。

もちろん、その時期や魚種は地域によって異なります。しかし、この量販店の販売カレンダーそのものに問題が指摘されています。

初鰹としてのカツオが日本近海に来遊するのは通常4~5月で、3月の漁場はまだ本州から遠い沖縄のさらに南の近海などになります。

また、漁獲量がまとまらないため価格が高く、かつ漁場から大消費地まで遠いために鮮度低下の恐れもあり、本来は3月に売り出すのは合理的ではありません。

しかし、量販店の戦略として、旬の先取りで売り場を盛り上げたいという意向が働き、このような旬の先取り競争が量販店間で繰り広げられてきました。

初鰹は本来、漁場が日本近海になる4~5月にかけて売り出すのが価格・鮮度面で最も合理的なのですが、3月から売り始めると、消費者が飽きてしまうため、初鰹の販売をずっと続けるわけにもいかず、4~5月には別の魚種に切り替えてしまうのです。

このように、そもそも量販店の売り場作り自体が抱えてきた問題点もありますので、気候変動などの影響による漁期の変化に量販店の売り場が適切に対応することを期待するのは難しいと考えた方が良いでしょう。

最近では、サンマの漁獲量が大きく落ち込み、かつ漁期も大幅に遅れています。

しかし、それでも量販店は秋になればサンマを売りたいので、売り場には高い価格で並びます。

このように、漁期のずれは逆に高い商品として販売される機会ともなりますので、一概に安くなるだけではないでしょう。

しかし、量販店の販売スケジュールからずれて大漁になった場合にどうすればいいのか。

確実な方法があるわけではありませんが、上記のような販売スケジュールに必ずしも縛られない鮮魚専門店やネット販売などを狙って取引するという手が考えられます。

もちろん、そのことで魚の販売価格が高くなるわけではありませんが「時期外れだが味が良い」といったことをアピールできれば、それなりの効果はあるのではないでしょうか。

また、加工原料としての販売先を探すことも一つの手かも知れません。旬の時期であれば高くて加工業者が手を出せなくても、時期外れで若干なりとも安くなれば買ってくれる加工業者も出てくるかもしれません。

いずれにせよ、「これ」という対応策はないと思いますので、さまざまな業者に声をかけ、従来の販路だけではないルートを探してみることが必要でしょう。

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細川良範

有限会社フードサポート 代表取締役

旬の魚の品質を科学的根拠で示し、ブランド化して販売しましょう

随分昔のことになりますが、「戻りカツオ」「下りカツオ」と言う旬を訴求する商品を売るために苦労したことがありました。

当時、関東のカツオの旬は春でした。遠い東北のカツオを、鮮度を落としてまで運んでくることはしなかったようです。

私たち販売者もカツオは春が旬です。売って売って売りまくった後でまたカツオを売りたいとは思いませんでした。他にも売るべき商品が山ほどあり、興味すらなかったからです。

しかし、実際に販売する側が食べてみて本当に美味しいのは下りだと確信してからは、春に劣らず初秋のカツオ「下りカツオ」を売るようになりました。

国内各地では、種々の魚の旬が生産地で異なります。旬の魚はどう違うのかということを、科学的な根拠をもとに示して売るのが産地も含めた業界人の姿勢だと思います。

魚種の脂肪含有率、餌による身質の変化、価格など示すべき基準があると考えます。

少なくとも脂肪分については、瞬時に測定できる機械や道具が開発されています。高価な機械もありますが、公的機関からの助成金が付く場合もあるようです。

あとは商品をブランド化して訴求するのですが、センスのあるデザイナーはたくさんいます。そうしたデザイナーに相談するのもひとつです。

最後になりますが、より消費者に近い加工を産地で施すということは大変重要です。なぜなら、消費地や家庭では魚から出る生ごみは捨てるより他にありません。

しかし、もし産地で集中的に加工をしてもらえれば、その残りかすが他の動物の飼料や肥料になったり、化学製品の原料にさえなるかもしれないからです。ぜひ検討してみてください。

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