私は山間部の出身ですが、海の魅力に惹かれて漁村に移住し、漁船の乗組員となりました。
事あるごとに「魚離れ」という言葉を聞きますが、毎日のように新鮮な魚を扱い、食べる者として残念に思います。
今、私が問題意識を持っているのは「担い手不足は漁師・漁業だけの問題ではない」ということ。
少子高齢化や和食離れにより、魚を食べる人も減る一方です。これは、地域にも影響を与えます。
漁に活気があれば、おのずとその周辺の暮らしや観光などの産業も活性化するものです。
今は残念ながらその逆です。
こうした状況を、漁業者だけでなく「自分事の問題」と理解してもらい、地域の活性化を当事者として一緒に支えてもらいたいです。
行政と民間が分け隔てなく、飲食店やホテル、小売業者はもちろん、地場の企業や団体なども巻き込むにはどうしたらいいでしょうか。
地域を上げてうまくいっている事例はありますか?
(秋田県・市井忠久さん/仮名・30代)
麓 貴光
株式会社水土舎 代表取締役
三重県の「漁観連携」が好例です。行政の協力を得て仕組みを構築しましょう
ご指摘のとおり、人口減少に加え「魚離れ」も深刻です。打開策として地元の購買意欲を刺激し地産地消を目指すのは良い考えだと思います。
似たような取り組み例は、おさかな祭りや○○フェアなどの「イベント型」、直販施設などの「常設型」、両者の中間にあたる定期的に開催される「朝市(夕市、マルシェなども含む)型」等に大別されます。
ご希望されている「業種業態を超えた幅広い関係者が参画するもの」は「イベント型」が該当するかと思います。
三重県鳥羽市では「漁観連携」という概念で、行政・漁業・観光業の各団体が連携した取り組みを展開しています。
鳥羽市は海女漁業が地域の観光資源でしたが、近年は海女の高齢化やなり手不足が深刻でした。
海女漁業で獲るアワビやサザエ、伊勢海老などを目玉とする飲食店やホテルにも大ダメージとなるため、行政も協力し、海女漁業振興をメインに地域活性化案を話し合いました。
その結果、「海女さん応援基金付き宿泊プラン」が誕生しました。宿泊費の一部を基金として積み立てるもので、その基金はアワビの稚貝放流などの漁業振興などに活用されます。
さらに、漁業体験プログラムや地域外からの海女後継者募集など、地域ぐるみの漁業振興もスタートしました。こうした取り組みがメディアで取り上げられ、地域が注目を浴びると関連する産業・事業者にも経済的な恩恵が波及します。
まさに、「正の連鎖」が生まれ、地域活力が増す好例です。
こうした取り組みを実践するには、企画力はもちろん、地元調整、外部支援の調達、関係者間の協議・役割分担、事務作業などを担う全体的なコーディネート・事務局の役目が必要です。
関係者が多くなるほどその重要性は増します。行政の協力を得ながら、地域の実状に合った良い仕組みを構築されることを願っています。