群馬県で、ネギ、レタス、枝豆、ほうれん草といった野菜を、ハウス栽培しております。20代後半にサラリーマンから思い切って就農して5年ほどとなります。
最近は、土壌改良について非常に興味を持っています。特に肥料用魚粉が気になっています。
肥料用魚粉のメリットとして、微生物による発酵によって土地が活性化されて病害虫の発生が少なくなり、野菜のうま味も高まるとのことですが、デメリットとともに詳しく教えて欲しいです。
また、肥料用魚粉は米ぬか、カニガラ肥料などとブレンドすると肥料の効果が向上すると聞きました。米ぬか、カニガラ肥料に限らず、肥料用魚粉と相性の良い肥料の組み合わせ、配合する割合などのアドバイスもお願いいたします。
(群馬県・青木仁志さん/仮名・30代)
東山広幸
有機栽培農家
即効性が抜群の魚粉は、持続性がある米ぬかの組み合わせです
私は無農薬、無化学肥料栽培で多種類の野菜やイネを栽培し、主に宅配販売で生計を立てています。いままでいろいろな有機肥料を使ってきましたが、現在は米ぬかと魚粉を主に使用しています。
米ぬかはコイン精米所の管理者から無料で譲ってもらったり、格安で売ってもらっています。魚粉は食品工場から出た廃棄物(主に削り節の粉)を仲間の農家から譲ってもらっています。
肥料を購入するとなると大きな出費となりますが、米ぬかと魚粉は努力次第では格安で入手することが可能なのも魅力です。
魚粉の成分は「肥料の三要素」の成分比(%)でいうと「チッ素:リン酸:カリウム」が「7:7:0ぐらい」です(米ぬかは2:4:2)。
魚粉には根の発育を促すカリウム成分はほとんどありませんが、チッ素やリン酸は非常にたくさん含まれています。
魚粉を使うとなぜ野菜のうまみが高まるのかというと、植物がアミノ酸という形でチッ素成分を吸収することでアミノ酸合成のためのエネルギーが節約できるため、糖分の消費が少なくて済むからではないかといわれています。
農山漁村文化協会が発行している『高品質・高糖度のトマトつくり―低水分管理のしくみと実際』には、肥料によって糖度がどう変わるかが書かれています。それによると一番が魚粉で2位が大豆かすという結果だったように記憶しています。
私のこれまでの経験でも魚粉と米ぬかの組み合わせで味の悪いものができたことはありません。この2つの肥料は味に関して安心して使えます。
魚粉などの動物性有機肥料は畑に施用するとタンパク成分はすぐに分解がはじまり、チッ素の肥効がすぐに出ます。これは動物の細胞には細胞壁がないため、酵素分解が進みやすいせいではないでしょうか。
また、デンプンの多い米ぬかと違って植物にアタックする微生物が増えないせいか、魚粉は施用直後に作付けしても多くの場合は障害は出ません。心配なのはタネバエと臭いで犬猫が集まりやすいことぐらいです。
こういった理由から、魚粉は短期間で終わる作物や、終盤に肥やしが切れてほしいものに対して使うのに向いています。
ただし、米ぬかのように肥効の持続性はなく、施肥量が少ないほど肥切れが早いというデメリットがあります。相性バッチリの作物は、温暖な時期の菜っ葉や春のジャガイモです。
さらにキュウリ、トマト、豆類の果菜類や里芋の元肥(植え付け前に与える肥料)にも、魚粉のような速効性のあるものが適しています。
注意していただきたいのが、使用する量のさじ加減です。度を越した量だと化学肥料のみの栽培よりも味や安全性が落ちたりします。ところが、適量というのは畑によって異なります。
栽培している農家本人の経験でしか推し量ることができません。各々で判断してもらうしかないということです。肥やしの効かせ方は農家の技術の根幹ですので、実践を重ねて自分自身で判断してください。