まだ農家になりたての20代です。
今は野菜を中心に育てていますが、祖父の代からしばらく使っていなかった農地を再活用し、空芯菜(くうしんさい)を栽培してみたいと考えています。
空芯菜は今まで作ったことがないのですが、料理人をやっている知人から栽培してくれないかとお願いされたので、チャレンジしてみることにしました。
しばらく耕作放棄地になっていたので、まずは土づくりから始めなければいけません。
そこで、この土壌に合った肥料を探しているのですが、どのように調べればよいのでしょうか?
土壌分析や土壌診断などに依頼するといいと聞いたので、専門家に任せたいと思っています。
また、土の分析結果が出たところで、それをどう活かしたらいいのか分からないという事態は避けたいです。
肥料を選定するにはどんな部分に注目すればよいのでしょうか?
(島根県・立木さん/仮名・20代)
岩崎真也
農学博士、国立研究開発法人研究員
減肥、施肥など土壌診断基準値を参考に。指導員にも相談を
ご相談者さんがお考えのように、まず土壌診断を行うことは、とてもよいことだと思います。日本は、世界と比較しても多様な土壌が広がっています。また、日本の縦長な国土の気候や地形に合わせて、栽培されている作物も多様です。
そのため、地域ごとに施肥基準や施肥マニュアルが策定されています。圃場(ほじょう)の状態を把握することは、作物をよりよく育成するために大切なこと。いわば土壌の健康診断です。
土壌分析をするには、地域の農業試験場、民間の肥料・農薬会社などに、ご自身の畑の土を郵送するだけで、依頼できます。値段は項目数にもよりますが、だいたい5,000円から15,000円程度です。
また、最近では自分で畑の土の状態を分析できる「簡易土壌分析キット」も普及してきています。数年に一度でもよいので実施してみると、ご自身の圃場の状態を把握することができ、作物の選定や育成管理に役立つと思います。
土壌分析では、pH (酸性度合いを表す指標)や、窒素やリンの過不足、土壌そのものの性質を知ることで、状態に合わせた土壌管理を行うことができます。また、養分のバランスと作物の種類には相性があるので、分析で出てきた値をもとに、作物に合わせた施肥を行うことで、収穫量の向上や持続性も期待できます。
土壌診断後は、結果を各都道府県に設定されている「土壌診断基準値」と照らし合わせてみましょう、基準に比べて特定項目の不足がある場合には、資材(肥料など)の投入が必要です。過剰がみられる場合には「減肥基準」を参考にして肥料の量を調整するなど、管理方法を見直す必要があります。
また「施肥基準」には、施肥に関する基本知識や、より効率的に施肥を行うための技術なども記載されているため、よりよい圃場管理のために役立つはずです。わからないことがあった場合には、地域の普及指導員や施肥指導者に相談してみましょう。