わが家は、群馬県北部で枝豆や白菜など数種類の野菜を露地、ハウスで栽培している兼業農家です。
最近、近くにあるエリンギの栽培工場で、収穫済みの菌床(キノコの菌を植え付け、栽培するための培地)を肥料用に無償提供してくれることを知りました。
普段は牛の堆肥を使っているのですが、購入費用もそれなりにかかるので、試しに肥料として使ってみようかと思いTwitterでつぶやいたところ、「キノコの栽培済の菌床を畑の肥料にするなんて非常識だ!」と、知らない人からダイレクトメッセージが届きました。
その人に「エリンギの菌床を肥料にしてはいけない理由を教えてほしい」と返信しても、理由を教えてもらえなかったのですが、もしかして収穫済みの菌床を肥料にすると作物や土壌に何か害があるのでしょうか?
(群馬県・入間さん/仮名・40代)
北川清生
北川トマト
自然素材で無害、環境にやさしい土壌改良材としておすすめします!
私は現在、700㎡のハウスでトマトを有機栽培しています。肥料としては、竹やぶから土着菌を採取して米ヌカやモミガラと混ぜて発酵させた「土着菌堆肥」と、繊維質が多くミネラル分もある「刈り草堆肥」を使用しています。
質問にあるエリンギの廃菌床については、私も2005年から5年間ほど同じ三重県内の尾鷲市にあるエリンギ生産会社から運んでもらって、これらの堆肥とともに使用していました。
しかし残念ながら運転手さんの都合がつかなくなってしまい、手に入らなくなったため、それから使用していませんでした。
しかし、その優れた効果にはずっと注目しており、今年になってたまたま近くにある「ホクト株式会社」さんの工場からシメジとマイタケの廃菌床を譲ってもらえることになったので、再びキノコの廃菌床を肥料として使っています。
私が以前使っていたエリンギの廃菌床には、ヒノキのおがくずとフスマが7割近く使われていました。
現在使っている「ホクト」さんの菌床も、ブナやカバのおがくずやコーンコブ(とうもろこしの芯を粉砕したもの)、フスマ、米ヌカが使われているものです。
どちらもすべて自然の素材を利用していますから、まず無害です。
ただ、もらい受けたばかりのキノコの菌床はそのままの状態ではpH(酸性なのかアルカリ性なのかを表す度合い)が5以下と酸性に偏っているため、発酵させて完熟堆肥にしなければ使うことができません。
完全発酵させるとpHは上がってくるので、使用しても問題ありません。
また廃菌床の肥料はチッソ成分が0.5%と低いため、肥料効果を求めて使うというよりも、土壌改良資材と位置づけて使うのが良いと思います。
多量に施用すればするほど土が柔らかくなり、土壌改良効果が目に見えて出てくるでしょう。
その土の中に伸びた根を見ても、根毛がかなり細かく張っていて、土の養分をしっかりと吸っているためか、収穫後半の成り疲れもありません。
使い方としては、以前エリンギの廃菌床を使っていた際には、10アールのトマトハウスのうね間に、量として3トン強を2~3センチメートルの厚さで敷きつめ、収穫終了後はそれをうねに移して堆肥として土づくりに利用していました。
現在は、トマトのうねを立てる前に溝を切り、そこにほかの堆肥とともに入れ込んで使っています。
以上のように、自然の素材を使った菌床を活用して土づくりを行うことは、まさに「循環型農業」であり、この実践によって私のところでは美味しい野菜が収穫できています。
廃棄物を再利用することから環境対策にもなりますし、利点が多い農法だと思います。
それでももし心配であれば、まずは畑の一部で試験的に導入してみてもいいでしょう。その後、栽培方法に納得がいったなら、ぜひ活用されることをおすすめいたします。