神奈川県で旬の野菜を生産しています。まだ就農3年目です。
夏にカボチャうどん粉病が発生してしまいました。
薬剤はできるだけ使いたくないので、どうしたものかと困っていると、先輩農家さんに「尿素肥料を水で薄めてスプレーするといい」と言われました。
半信半疑で200倍程度に薄めて試したところ、白い粉をまぶしたような葉っぱが元気を取り戻してビックリしました。
いままで尿素肥料は元肥や追肥として土にまぜる使い方しかしてきませんでした。
うどん粉病に限らず、葉っぱに出る病気ならば効果があるのでしょうか?
(神奈川県・高橋さん/仮名・30代)
鈴木雅智
ブロ雅農園
うどんこ病に窒素を散布するというのは、本来の防除方法とは正反対の印象を受けます
こんにちは。神奈川県三浦半島で多品目栽培をしているブロ雅農園の鈴木です。農業高校の元教員で、就農した今も定期的に授業を持っています。
ブロッコリーをメインに作っていますが、野菜全般を栽培しており、カボチャも、「みやこ」「ブラックのジョー」「コリンキー」「バターナッツ」「ソーメンカボチャ」「坊ちゃんカボチャ」などさまざまな品種を作ってきました。
私の経験からしかお話できませんが、ご参考にしていただけたらと思います。
まず、率直に言うと「尿素肥料を水で薄めてスプレーするといい」という話ですが、私は初めて聞きました。
今までの常識でいうと、うどん粉病自体が「窒素が過剰になると発生しやすい病気」です。尿素肥料は窒素成分を多く含む肥料なので、うどんこ病に窒素を散布するというのは、本来の防除方法とは正反対の印象を受けました。
相談者さんの畑で、かぼちゃの葉が元気になった理由を推察してみましたが、窒素は「葉肥」と呼ばれるくらい、葉を元気にさせる効果がありますから、肥料の葉面散布と同様、病気が治ったわけではないが、植物体自体を元気にさせて、病気を目立たなくさせたのではないかな?と推察しています。
うどん粉病は「植物体の元気がなくなると発生する病気」でもあります。
相談者さんがやった方法は「葉面散布」だと思いますが、窒素によって植物が元気になって、病気の進行を遅らせた可能性があるのではないかなと思っています。
私の考えでは「農業には正解はない」ですから、これまでは"非常識”だと考えられてきた方法が覆ることもあると思っています。
ですから、「病気の植物に窒素肥料をかける」という、これまであまり考えられない方法も試験的にやってみるのも面白いかもしれませんね。
ただ、条件によっては悪化させてしまうこともあると思います。
そのため、いきなり圃場全体で実行するのではなく、試験区を作って、限られた面積からいろいろと試験してみるのがよいのではないでしょうか?
「窒素肥料を水で薄めて」という記述から、固形や粉末のものを使用していると想像しましたが、内容は葉面散布なので、その理屈なら、より吸収しやすい「窒素分の多い液肥」などはいかがでしょうか?
三浦半島ではウリ科を作っている方が多いですが、その対策に硫黄を使用する方も多いです。
硫黄は「硫黄粉剤」として有機農産物の日本農林規格で使用が認められている農薬でありますし、使ってみてはどうでしょう?
ご自身の畑を「無処理区」「窒素肥料区」「液肥区」「硫黄粉剤区」と区分して、試験することによって次年度の経験となり、先輩を超える経験値が得られるかもしれません。
最後に「葉っぱに出る病気ならば、どんなものにも使えるのだろうか? 」と書かれていますが、それは難しいと思います。
あくまで、葉面散布として、葉から栄養を吸収させるものですから、一時的には元気になるかもしれませんが、病気を無くすものではありません。
人間で例えると、薬ではなく栄養ドリンクのようなものととらえていただくと良いかもしれません。
風邪も、初期に栄養ドリンクを飲んで休んでいれば薬を飲まなくても治ることがあるかもしれませんが、確実な方法は、やはりそれぞれに合った薬の服用をすることではないでしょうか。
また、事前防止として「土壌診断」などを行い、過剰な窒素施用をしないように予防するのも大切なことだと考えています。