有機栽培で少量多品目の野菜を栽培している農家です。
私は肥料のほとんどを自然物由来のもので補っています。主に、米ぬかや菜種油粕、魚粉を使っています。
ところが先日、土壌分析をしたところ、カリウムが足りていない結果になりました。
土壌診断の内訳としては
CEC:13.8
腐植:4.43
塩基飽和度:57.9%
という結果でした。
確かに、トマトにしてもサツマイモにしても、根の肥え方が貧弱のような気もします。
そこで、有機肥料の内、カリウムを大量に補給できるような資材や肥料はないか、教えていただけないでしょうか。
(京都府・谷内さん/仮名・30代)
生田智昭
株式会社大地のいのち(サンビオティック)代表取締役
カリウム多めのボカシ肥料は、値段は高いけれどオススメ
長崎県西海市で、みかんやサツマイモ、玉ねぎなどの野菜を生産・卸をしながら、食品加工や、農業資材の販売や生産組合の管理を行っている「大地のいのち」の代表を務めております。
カリウム成分は、肥料用語では「加里」と表記されますから、ここでは加里と書くことにします。
たしかに有機肥料には、加里成分が少ない傾向にありますから、有機栽培の方は加里が不足する傾向にあるかと思います。
有機栽培(有機JAS)に使用できる加里成分が多い肥料には、主に塩化加里、硫酸加里、草木灰、パームアッシュ(ヤシ灰)、堆肥(牛糞堆肥など)、ボカシ肥料があります。
このうち、塩化加里と硫酸加里は、いわゆる化学肥料になりますが、有機JAS認定圃場に使用可能と認められている商品もありますので、そのようなものは、有機栽培をされていらっしゃる方も、安心してお使いいただける便利な肥料です。
また草木灰やパームアッシュ(ヤシ灰)というのは、いわゆる植物を焼いたときに出る灰のことです。
この灰には、植物に含まれていたカリウムが凝縮されていますので、加里成分が多く含まれています。
一般的な草木灰には、加里成分が10%以下の商品が多いですが、パームアッシュというヤシ殻を焼却したものは、加里成分が30%程度あるものもあり、非常に便利です。
草木灰やパームアッシュは、効果が現れるまで時間がかかるタイプの加里肥料です。また、カルシウムなどのアルカリ成分も含んでおり、土壌の酸性を矯正する作用もあります。ですから、追肥よりも元肥に使用するほうがオススメです。
草木灰は、ご自分でも作ることができます。庭木や果樹の剪定くずなどの木材や落ち葉、枯れ草など焼却すると灰になりますので、これを畑にまく方法です(ただし、焼却自体が推奨されていないご時世ですので、その点についてはご判断ください)。
それから、堆肥を活用するということも良いです。たとえば、牛糞堆肥には、加里成分が2%程度ありますから、1,000kgを施用すると、そのなかには加里が20kg含まれることになります。
堆肥の施用量は量が多いですから、意外に大きな加里成分を期待できます。ただし、堆肥は、作付けの1カ月程度前に施用するのが原則なので、その間に雨が降ると、加里成分が流亡しやすくなります。
堆肥の加里成分は、おおよそ半分しか残らないと思ったほうが良いでしょう。
最後に、ボカシ肥料もオススメです。
カリウムに加えて、窒素やリン酸などの成分も含んだ、さまざまなボカシ肥料が市販されています。
リン酸の多い物や、加里の多いものなど、肥料ごとに特徴が異なるため、ご自分の作物や土壌に合わせた肥料を選ばれると良いと思います。
ボカシ肥料は高価ですが、原則、発酵してありますので、効果が高いものが多いです。
弊社では「鈴成(すずなり)」というボカシ肥料を製造販売しています。NPK:0-8-10とリン酸と加里に特化した肥料になっており、非常に人気の商品の一つです。
以上の通り、化学肥料以外での加里肥料と言うのは、あまり種類は多くありませんので、参考に選ばれてみてください。