千葉県の3代目の野菜農家です。
最近、大学生のひとり息子が「農家を継いでもいいよ」とポロッと言い出しました。
このまま廃業するのかと思っていたので、ひと安心です。
しかし、息子は結構気まぐれなところがあるので、気が変わらないうちに計画を立てたいです。
息子に跡を継がせた近所の農家に相談したところ「事前に計画をつくったほうがスムーズにいくよ」とアドバイスしてもらいました。
インターネットで調べてみると「事業承継(後継者に資産を引き継ぐこと)」の計画づくりをするべきということはわかったのですが、どのタイミングではじめるものなのでしょうか?
(千葉県・安田和夫さん/仮名・50代)
伊東悠太郎
水稲種子農家
事業承継計画は、定義(ゴール)を設定し、逆算して計画づくりを始めましょう
跡継ぎが決まったからといって、めでたしめでたしにはなりません。後継者は、先代が築いた取引先との人脈や生産技術、経営者としての信用など、さまざまな資産を受け継ぐ必要があります。
事業承継は定義が曖昧だからこそ、それぞれの経営体によって、異なる定義(ゴール)を設定する必要があります。その定義(ゴール)から逆算して計画づくりをスタートさせたら良いでしょう。
一般的に、事業承継の計画づくりは5~10年かけて取り組むことが望ましいと言われています。
つまり、設定した定義(ゴール)の10年前から取り組めば余裕がありそうですが、相談者さんの病気や息子さんの心変わりなど、何があるか分からないものです。
そのため、「まだ15年先だから良いか~」などと悠長なことを言わず、早め早めに取り組むことをおすすめします。
この定義(ゴール)について、例えば「子(後継者)が結婚して、25歳に到達する年の1月1日に法人化する」など、息子さんの年齢やライフイベントに合わせて設定すると、より具体的になります。
期限を設定するメリットは、カウントダウンができるということです。決められた期限まであと何日かが明確になることで、1日ずつ消耗していきますから、「やらなければ!」という気持ちが日々強まります。
その際、定義「ゴール」に向けて、何から手をつけていくかが重要です。事業承継には、経営者と後継者のどちらかの頭の中にしかないものや、「見える化」できていないものが山のように出てきます。
それらを紙やホワイトボードなどに文章や図で落とし込んで「見える化」し、両者の考え方の相違を明らかにします。
そのギャップを埋めるためには、何をできるか? するべきか? を「やることリスト」としてどんどん書き込んでいき、課題を具体的にすることが計画づくりの第一歩です。
この「やることリスト」にも正解はありません。後継者に必要だと思ったものをひたすら書き出してみましょう。質よりも数で勝負です。この積み重ねにより、「事業承継の計画づくり」の完成度が決まります。
なお、1年目や2年目の農閑期に「やること」が集中する傾向は高めです。そこで、特定の時期に負担が集中しないよう、本当にそのタイミングでやる必要があるのかをよく考えて、「やること」をうまく分散させることが重要です。
ぜひ私がJA全農に勤務していた際に作成した事業承継ブックもご活用ください。