新潟県産コシヒカリを直売、通販している稲作農家です。親子三代、米づくりは約100年ほどとなります。
三代目の私は、現在40代後半。50歳になるタイミングで親から継承することとなりました。
今後は米づくり一本ではなく、米糀と水だけで作る添加物不使用の甘酒、コクのある甘酒カレー、オリジナルブレンドの塩麹などといった新しい商品販売に挑戦していくことも考えています。
そこで経営を明確化し、販売に協力してくれる企業と良好な関係を築くためにも、法人化することにしました。
法人化するにあたり、法人登記に関する必要な書類、現有資産の取り扱い、周辺関係者への挨拶方法、この先の多角的な経営に対する計画の立て方など、やらなくてはならないことがたくさんあります。
自分の頭の中で項目を挙げていくのは楽しいのですが、だんだん混乱してきました。
時間がかかってもいいので、できるだけ費用をかけずに事務手続きをしていきたいのですが、どのような機関に相談していくのがよいでしょうか。
(新潟県・野田さん/仮名・40代)
伊東悠太郎
水稲種子農家
計画づくりは早く、期限を区切り、積極的に相談することが大切です!
私は水稲種子農家で「農業界の役に立ちたい」代表として、JA全農で事業承継支援を立ち上げています。現状、多くの農家さんが事業承継問題を抱えており、非常に大きな問題になっています。
計画づくりについては、早ければ早いほどいいです。後継者が先代から事業を引き継ぐ場合、経営権の譲渡やさまざまな資産のほか、知的資産といって、経営者としての信用や取引先との人脈、生産技術、組織をマネジメント(管理)する方法なども受け継がなければなりません。
この時大切なのは、期限を区切ること。期限を設けて「やることリスト」を整理し、事業承継計画を立てます。
また、相談者さんのように後継者は受け身ではなく、ご自身が主体となって計画する姿勢が大事です。私は事業承継をリレーのバトンパスにたとえて話すことが多いのですが、バトンを渡すゾーンがあるかないかで、先代の経営者と後継者が並走・伴走できる期間が変わりますから、計画づくりは非常に重要なのです。
計画を作るにあたっては、一人で悩まないでください。かならず行き詰まります。一人で悩んでいると、混乱することもしばしば起こります。
その時は積極的に、サポートしてくれる人や機関に相談しましょう。各県には農業経営相談所が設置されています。そちらで専門家の派遣事業がありますので、規定にもよりますが、原則無料で相談できるはずです。また、金融機関やJAグループでも相談に乗ってもらえます。
ときには他業種の経営者や、後継者と話すことも有意義です。質問したり、されたりするうちに、言語化することで自分の考えがまとまりますし、問題点も見えてきます。
対話や相談の機会は意識的に増やしましょう。考えは時間が過ぎると変化していくので、支援機関は積極的に利用してみてください!