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米作りの高齢化がすすんでいます。担い手不足はどう対策すべきですか?

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米作りの高齢化がすすんでいます。担い手不足はどう対策すべきですか?

米作りをはじめたばかりの20代です。

うちの集落では米農家の高齢化が進んでおり、後継者不足で事業継承も進んでいません。

このままでは耕作放棄地が増えてしまいますし、過疎化もますます進んでしまうのではないかと心配しています。

どうやって若手の米農家を増やしていけば良いのか、教えてください。

佐々木茂安

日本のお米をおいしくしたい。佐々木農業研究会代表/農業経営技術コンサルタント

高齢化には理由があります。補助金や制度をうまく活用しましょう

米作りと高齢化の現状


日本の主食である米は世界第5位の生産量を誇り、決して輸入にばかり頼っている国ではありません。

ところが、それに対する農家人口は減少の一途を辿っています。

総務省によると、平成22年には260万人いた農家が平成31年には168万人程度にまで減っています。

農業人口の6割が65歳以上で、35歳未満の農家はわずか5%と、非常に高齢化が進んでいます。

70歳に近い方が先祖代々の土地を守っているという実情もあり、自分の息子には農業を継がせない方も少なくありません。


なぜ農業は高齢化が進んでいるのか


農業が衰退している一番の原因は、「重労働なうえに低収入である」という点です。

最近では農家に関わったことのない人が脱サラをして農業を始めると言うケースもありますが、ゼロから農業を始めようと思うと、金銭的な敷居が高いことも問題になっています。

米農家になる場合、農業機械にかける投資は少なく見積もっても2000万円ほどかかってしまいます。

いきなりそのような大金を持っている方は少ないので、農業をやりたいと思っていても、資金面でとん挫してしまうのです。

加えて、上手く就農できたとしても、初年度の売上は多くの場合、サラリーマン時代よりも少なくなってしまいます。

農業は補助金が膨大にかけられていると思われがちですが、使いにくかったり、新規就農者がすぐに利用できる制度は少ないのです。


集積化の問題点


農家人口が減少していることから、企業や1人の農家に農地を集めて管理してもらう「集積化」がすすんでいます。

地域によっては、集落全体の農地を1人でほとんど担ってしまっているようなケースもあります。

集積化は、農家は儲かり、地主も助かり、生産量も下がらない方法に思えますが、実際は問題点がたくさんあります。

集積化した十数年後、もし集積化した企業や農家が農業を辞めてしまったらどうなるでしょう?

集積化は悪い制度ではないものの、中山間地の小さな集落や農地を守っていく上では、他の対策を考えなければなりません。


農業の担い手づくりの事例


担い手づくりの事例はまだまだ少ないものの、3つ事例を紹介します。


集落営農法人の組織化


「集落営農法人」を作ることで、これまで個人で受けることができなかった補助事業を受けることができるようになります。

担い手対策については「農の雇用事業」の補助金を使うことができます。

農の雇用事業はさまざまなタイプがありますが、法人が新規就業者に対して実践研修を支援する場合、年間120万円の補助が出ます。

ほかにも、新規就業者に対して新たな法人設立に向けた研修を支援する場合や、従業員等を国内・海外派遣して研修する場合も、この補助金の対象となります。


水田転作で畑作に取り組む


水田転作(田んぼ地である農地で畑作を行うこと)をして、「経営所得安定対策」の「水田活用直接支払金」を受け取ることも可能です。

この事業は、日本の米余りを是正するために設けられた制度で、地目(土地の種類)が田んぼの農地で畑作を行うと、10アールあたり数万程度の補助を受けることが可能です。

補助額については自治体や作物により大きく異なります。

現在、国が大豆や小麦の生産に力を入れているため、補助額が高い傾向にあります。


地域おこし協力隊制度を利用した第三者継承


最後に、総務省が主体となっている、「地域おこし協力隊」と呼ばれる制度を活用する方法もあります。

地域おこし協力隊とは、都会から人材を呼び込み、月々15万円~25万円ほどの報償費を支払うことで、地域活性化を担ってもらうという制度です。

任期期間は最長で3年ですが、農家に研修をさせて第三者継承に繋げようと、地域おこし協力隊を活用をしている自治体もあります。

しかしながら、こうした新規就農者が安定した収入を得るために、6次産業化をすすめやすくするような取り組みや、拠点作りが必要となっています。

今後は、米作りを行いたいと考えている若者に対して、準備から技術・経営指導、加工、販売までをワンストップで支援する窓口が必要なのではないでしょうか。

このお悩みの監修者

佐々木茂安

日本のお米をおいしくしたい。佐々木農業研究会代表/農業経営技術コンサルタント

滋賀県の改良普及職及び研究職を経て、2014年に「佐々木農業研究会」を設立。農業経営技術コンサルタントとして、栽培技術の指導や農業生産者の自己研鑽活動を支援。会員は秋田から愛媛まで80人。日本水稲品質・食味研究会および日本科学者会議(支部は滋賀県)会員

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