自然豊かな北海道の農村地帯で、稲作を中心にアスパラガスやピーマン、ブルーベリーなどの野菜を栽培しています。
最近、JAS有機栽培認証を取得し、有機栽培にも力を入れつつ、多品目の野菜を作って直販もしています。
直販では買ってくださるお客さんの「おいしい」という言葉と笑顔をダイレクトに感じることができるので、やりがいを感じています。
そんなとき、地元の大学生から「農業や野菜を主役にした農カフェイベントをやりたいから協力してほしい」とメールが来ました。
もちろん若い人たちの力になればと思い、二つ返事で協力することにしました。
しかし、メールの返事が遅かったり、質問にしっかり答えてくれないなど、手順が素人すぎて困っています。
具体的な問題点はいろいろありますが、提供する野菜の量も曖昧だし、もちろん買取なのかどうかも不明。「少しお待ちください」という返事の後、まったく進展していません。
初めてやるイベントらしいので不備があるのは仕方ありませんが、このまま続けていてもストレスが溜まっていくだけで、すでに疲れてきています。
怒るわけにもいきませんが、こちらが我慢するのも良くないので、なんとかしたいです。
若い人をうまく指導する方法、つき合い方が全然わからないので、いい関係の作り方を教えてください。
(北海道・鈴木さん/仮名・50代)
小川繁幸
東京農業大学 准教授
大学生には協力者ではなく地域の先生として接し、良好な関係を築くことが大切です
農業に関心を持つ意欲的な大学生との交流は、とても魅力的ですよね。
しかし、コロナ禍の影響でコミュニケーションはオンラインを余儀なくされ、文化祭といったイベントも中止せざるを得ない状況が続いたことで、先輩から後輩へと脈々と伝えられてきたイベント運営のノウハウも断絶してしまいました。
その影響は大きく、イベントを再開しても企画運営に四苦八苦しているのが現状です。
社会状況が「withコロナ」に変わったことで、イベントの運営方法も従来と変更せざるを得ないところも出ています。
そうしたなかでイベントを行うとなると、どうしても企画内容や連絡調整に不備や、至らない点が生じてしまいますから、学生に対しては、単なる「協力者」ではなく、「地域の先生」として接することが大切ではないか、と思っています。
相手が学生だからといって叱ることを我慢することはお互いにとって良くないことですし、良好な関係を築くためにも注意すべき点はきちんと注意すべきです。
ただし、注意の仕方には注意が必要です。単に叱るのではなく、「何が問題で、どう改善すべきなのか」をきちんと伝えなければなりません。
「教師(指導者)」と「学生」という関係性をどのように構築するかが大切です。
関係性を構築するために効果的なのは、地元の農業や農家を「学ぶ機会」を積極的に設けることです。
生産した野菜を単に提供するだけではなく、野菜の作り方や作るときのこだわり、生産者が苦労された点なども合わせて情報提供できれば、企画の「協力者」としてだけではなく、地元の農業を教えてくれる「地域の先生」になります。
その学びを通じ、学生には農業や農家に対する尊敬が生じ、信頼関係の形成につながります。
私が所属する東京農業大学でも、学生が地域の農家と協力してイベントを企画しております。協力してくださる農家の方々は、学生を自らの教え子、ひいては息子や娘のように接してくれます。
時には農家の方々が学生を叱る場面もありますが、必ず学びがあるように指導していだいております。
その結果、学生はたくましく成長し、卒業時には第二のふるさとの親ができたと地元の農家の方々に感謝し、卒業後も農家と良好な関係を続けています。
ご相談者さんもぜひ、地元の大学生と良好な関係を築いていただければと思います。