大阪のターミナル駅から30分圏内の都市部で古くから続けている米農家です。
地域が都市化する前から稲作をしてきましたが、都市開発で周囲はほぼ住宅地になりました。
私の父の代にも一部の農地はマンションや駐車場にし、現在は2.5反の規模です。
自分自身も不動産経営と兼業で農業をやっています。農業は収入源としては主軸ではないのですが、稲作が好きで、地域の子どもの見学の受け入れなど、農業を伝える取り組みにはやりがいを感じています。
そこで、農地を活用して、都心の人たちにも農業を身近に感じてもらいたいと考えています。
体験型の市民農園にすることを検討しているのですが、市民農園のイメージは野菜畑で、田んぼの体験農園はあまり聞いたことがありません。
田んぼで体験農園をやると何か制約があるのでしょうか?
(大阪府・平野嗣巳さん/仮名・60代)
伊東悠太郎
水稲種子農家
観光農園化については農水省の「市民農園をはじめよう!」という資料が役立ちます
今回は、「市民農園」と「後継者不在」という2つの相談だと受け取りました。
市民農園の開設については、農水省が発行する「市民農園をはじめよう!」という資料が非常にわかりやすいと思います。
今回のケースだと「農園利用方式」が現実的です。
さらに、農地に利用者向けの休憩施設等を併設する場合は、「市民農園整備促進法」の手続きを取ることも必要になるのではないかと思います。
詳しくは農水省が公開しているそちらの資料をご覧ください。
次が恐らく本質的な質問だと思いますが、後継者問題ですね。
お子さんが「継がない」と明確に伝えているのか、「継がないだろう」と相談者の方が思っているだけで実際には聞いたことはないのかは大きな違いです。まずはお子さんの意思を、しっかりと直接確認する必要があります。
それで明確に「継がない」ということであれば、相談者様が継いでもらう第三者を探すか、農地を売るかの判断になると思います。売る相手は、近くの農家や不動産業者という可能性が考えられます。
都市開発ですでに周囲は住宅街とのことですから、その農地も売ろうと思えば売れるエリアかもしれません。それを相談者様が良しとするかどうかの問題です。もしそれが嫌だとすれば、「お子さん以外の第三者へ事業承継する」という選択肢になると思います。
第三者承継となれば、後継者探しは婚活と同じです。
まずは相手を見つけるための活動が必要になります。最近は事業をマッチングするサイトも増えていますので、そういったところへまずは相談したらよいと思います。
ちなみにrelayというマッチングサイトがおすすめです。
いずれにしても、「後継者候補」をまずは見つけなければ話はスタートしません。
もし幸いに候補者が見つかったとしても、さらにそこからお互いの思いを確認したり、実際に現地を見たりという時間も必要です。これはデートみたいなものです。
そして何回もデートを重ねることで、お互いを知り、合意形成できれば、めでたくマッチング成功、結婚ですね。
結婚がゴールと思いきや、結婚は始まりでもありますので、後継者が「実際に農業をやってみたら思っていたものと違っていた」とならないようにしていく努力も求められるでしょう。
第三者承継は、血縁の事業承継と比較して時間が余計にかかります。
まずは相談者様が、「血縁者以外でも良いので継いで欲しい」のか、「血縁者が継がないのであれば売ってしまっても良い」のか、考えて結論を出してみてください。