茨城県で芝畑を管理している40代です。
最近、Instagram(インスタグラム)に映える写真を投稿することが流行っていますよね。
うちの芝畑は本当にロケーションがよく、知り合いの若い女性達(特に東京から来た子)を招くと喜んでくれるので観光資源としても活用できないか?と思っています。
でも、「撮影可」とかそんなことを掲げたところで人は集まらないでしょうし、
実際に人が来たところで手持ち無沙汰にならないかと不安になります。
フォトスポットとして芝畑を使う際の何かいいアドバイスはありますでしょうか?
(茨城県・吉村遼さん/仮名・40代)
小川繁幸
東京農業大学 准教授
芝畑という空間をどう演出したら素敵になるのか考え、「農家」ではなく「他者」の目線になりましょう
芝畑という空間は観光資源としてとても魅力的だと思います。ただ、フォトスポットとしての魅力をお伝えするには、ちょっとした工夫が必要かもしれませんね。
プロのカメラマンであれば、素敵な芝畑を目にしただけで「どのような構図で撮影しようかな」とすぐに撮影イメージが湧くのかもしれませんが、一般の方はいざ「自由に撮影しても良いですよ」と言われても、撮り方がわからないので戸惑ってしまうかもしれません。
そのようなときに必要となるのが、ちょっとした撮影モデルの提示。
例えば、「このような構図で撮影すると、こう撮れるよ」といったお手本があると案外、一般の方の撮影のハードルも下がりますし、まるでプロカメラマンのように撮影できたら、SNSにアップしてくれるかもしれません。
すると、自ずとインフルエンサーマーケティングに繋がり、芝畑が新たな観光資源として認知されていく可能性があります。
撮影モデルとしては、例えばInstagramを通じて流行した「天使の羽」のような撮りたくなるような撮影スポットを設けたり、何もないところにポツンと枠を設けたりするだけでもアートになります。
大切なのは、芝畑という空間をどのように演出したら素敵になるのかという発想と、「農家」の目線ではなく「他者」の目線になることです。
その点では、若い女性と一緒に撮影モデルを考えたり、カメラマンやデザイナーといったアーティストと一緒にコラボしたりすると、今まで気づくことのできなかった芝畑の新たな価値表現ができるかもしれません。
なお、芝畑があること自体、一般の方は認知できていない可能性があります。
芝も畑で育てるモノ。そんな農家にとって当たり前のことが、一般の方にとっては新鮮な情報です。
この点を逆手にとって、「芝畑農家がおすすめする映える芝の撮り方」のような情報発信も面白いと思います。
そして、せっかく丹精込めて育てられた芝ですから、芝が痛まないよう撮影や利用のマナーも併せて情報発信するとよいかもしれません。
その際は単に「立ち入り禁止」といった看板を立ててしまうと空間としては台無しになりますし、“立ち入り禁止”だけでは何が禁止なのか利用者がきちんと理解できないために、マナー違反が出てくる可能性もあります。
大切なのは、利用者にも芝に愛着を持ってもらえるような情報発信。
例えば、良い芝と悪い芝の見分け方を紹介したり、「立ち入り禁止」ではなく「皆さんのおかげで良い芝ができています」といったように情報の発信の仕方を工夫したり、利用者が芝畑の関係者になったつもりになれるような伝え方がポイントです。
そもそも芝を管理するという点においても、フォトスポットを設けると利用者の行動範囲をある程度管理できると思います。
ぜひ芝畑の表現の可能性を模索していただければと思います。発想は自由ですし、何より色々な人と関わりながらアイディアを考えることは楽しいですよ。