有機栽培した野菜を近くのスーパーに卸しています。
夏の時期は、雨よけで栽培した夏秋トマト(品種は「桃太郎8」)などが中心ですが、2023年の夏は、廃棄されるロスが例年より多めだったと、スーパーの青果担当者から聞きました。
担当者の話では、高糖度のものや、硬玉系で裂果や軟化しづらいものの方が扱いやすいそうです。
そのため、生産者からすると、それに加えて、暑さに強くて収穫終盤でも果実が肥大する(玉伸びする)ものが理想的だと考えています。
今後も夏は猛暑になると予想していますが、そんな暑い夏に対応できるおすすめの品種を教えてください。
(新潟県・長谷川慎也さん/仮名・30代)
龍 慶介
てしまの苗屋/てしま農園
水やりの回数を増やしても、裂果しにくい硬玉系の3品種を紹介します
山口県で、野菜や花の苗専門の農業法人と提携した種苗を扱う「てしまの苗屋」の代表をつとめる龍と申します!この質問は、まさに我々の得意分野です!
品種の選定も大切ですが、暑すぎる夏でも安定した収穫をするためには栽培方法も大切なので、まずは栽培管理についてお話しします。
トマトの場合、日中の遮光対策はもちろんですが、高温環境下では体内の温度を下げようと、葉の表面の気孔を開いて、水分を大気中に放出、つまり蒸散をひんぱんに行います。
このときに不足した水分を補うとともに、地温を下げるために水やりを行います。
そのため、灌水は1日に数回に分けて、回数と量を増やすと良いでしょう。
それでも、暑すぎる日は根からの水分吸収がうまくいかなくなる傾向がありますので、夕方の灌水も効果があります。
私たちが提携している農業生産法人「花の海」は山口県にあるため、相談者さんとは気象条件や生産環境が異なるとは思いますが、温暖化の影響で、近年は夜間の気温が下がらない熱帯夜が続くこともあります。
通常は夜間、水分が残るとトマトの茎枝が徒長したり、灌水回数が増えると、玉割れしやすくなったりと、良いことはあまりないのですが、2023年の猛暑では、夕方に水やりしたところ、裂果が少なく、好成績を収めました。
特に極硬玉の品種が高温下に耐えることができましたので、その経験から次の3つの品種をおすすめします。
1:サカタのタネの「麗月」
萎凋病(F:R-1,2)、根腐萎凋病、ToMV(Tm-2a型)、半身萎凋病、葉かび病、斑点病に抵抗性があり、センチュウ類の「ネマトーダ」に耐虫性があります。
極硬玉で裂果しにくく、高温期でも着果性が高いというメリットがあり、畑で赤くなってから収穫・出荷するのに向いた大玉トマトです。
食味も肉質がしっかりしているので軟化しにくく、収穫してからの日持ち(棚持ち)が良いのでおすすめです。
2:サカタのタネ「れおん」
萎凋病(F:R-1,2)、ToMV※1(Tm-2a型)、半身萎凋病、葉かび病、斑点病に抵抗性があり、こちらも、ネマトーダに耐虫性があります。
栽培の後半までスタミナがあって、果実が柔らかくなる「軟化玉」の発生が少なく、裂果しにくいのが特徴です。
そのため秀品率が高くなる極硬玉のトマトです。
3:タキイ種苗「桃太郎なつみ」
萎凋病(F:R-1,2)、ToMV※1(Tm-2a型)、半身萎凋病(V)、葉かび病、斑点病、サツマイモネコブセンチュウ(N)に複合耐病虫性がある大玉トマトです。
食味の良さが人気の「桃太郎」シリーズでは最も固めで、食味の良さは残しつつ、暑い時期も収量が落ちにくいスタミナのある品種です。