夏秋作で2種類の桃太郎系トマトをハウスで栽培しています。
例年夏の時期には裂果が少なからず発生しますが、とりわけ2022年は8月中旬から9月に裂果が今まで以上に多く発生しました。
2022年は日中の高温や強い日差しに加えて、特に夜温も高かったので、樹が消耗して樹勢が低下したのが大きな要因ではないかと思っています。
例年、対策としては脇芽の葉を1、2枚残したり、2本仕立てにして果実に日が当たらないようにしたり、30度を超える日はハウスの換気扇も回してハウス内の温度を下げたりしてきました。
今年はそれに加えて、夜間にも換気扇を回そうと思っています。このほかにもやるべき対策はありますか?
(茨城県・木村昌彦さん/仮名・50代)
五十嵐大造
東京農業大学国際食料情報学部 国際食料情報学部(前教授)
高温が原因のトマトの裂果対策には、遮光・換気・蒸散の3つの方法があります
栽培時期が夏季にかかるトマト栽培では、裂果の発生に悩まれる方が多いようです。
裂果にはヘタの部分から生じるもの、果実が破裂するように筋状に割れてしまうものなど、その発生状況は異なります。
まず、前者のヘタから裂果する場合については、生育が旺盛になりすぎると、ヘタの部分から裂けるように筋が入っていくことがあります。
この原因は、施肥による窒素過剰が考えられますので、元肥、追肥によって、とくに窒素が多くなっていないかを見直して、施肥量を少なくしてみるなど施肥設計を見直してみる必要があると思われます。
後者の果実の破裂についてですが、おそらく相談者の方はこちらの症状でお悩みかと思われます。
相談者が言っておられるように、高温・強日射・吸水の影響が大きいと考えられます。最近は35℃以上の猛暑日も珍しくなくなりました。このような高温・強日射の下では果皮は硬くなり、果実の肥大に追いつけず、耐えられなくなって裂果しやすくなります。
また高温・強日射では土壌中の水分も減少してしまいますので、もちろん灌水は必須ですが、乾燥状態から急激に多くの水を与えると裂果がより発生しやすくなります。
灌水は一度に大量にはやらず、少量ずつこまめに与えるようにします(相談者の方はハウス栽培なので、うまくコントロールすることは可能かと思われます)。
高温・強日射に対しては、相談者のように葉を残しながら果実にできるだけ日光が当たらないようにするのは良い方法だと思います。
さて、ハウス内を高温にする条件は3つあります。
1.日射を入れる
2.密閉する
3.ハウス内から水分(水蒸気)が放出されない、の3点です。
したがって高温にならないようにするには、上記の3点と逆のことをすれば良いわけです。2と反対になる換気扇を回して換気するのは、理にかなった方法だと言えます。
3に対しては、水蒸気がよく放出されるようにするには、土面には蒸発できるだけの水分が含まれていること、トマトの葉が良く繁って蒸散がしっかり行われていることが挙げられます。
トマトの葉は直射日光を遮るだけでなく、蒸散により温室内部の気温を低下させる働きがあります。
1に対しては有効な方法として遮光があげられます。黒の寒冷紗は遮光性に優れていますがトマトの栽培には遮光率が高くて不向きです。
白色の遮光・遮熱用の資材がありますので、使用してみるのが良いかと思います。
なお、遮光率の高い資材を使用すると光合成に影響がでますので、トマトでは遮光率は20〜30%以下に押さえておくのが良いと思われます。ハウスの外張りでしたら比較的容易に被覆できるかと思います。
最後になりますが、桃太郎系のトマトを栽培されておられるということですが、桃太郎系では「桃太郎ワンダー」が劣化しにくい品種として紹介されています。試してみるのも良いかと思います。