東京の大学でマーケティングを勉強していましたが、生産から商品化までできる農家の仕事に魅力を感じ、思い切って就農しました。
育てているのは小さいころから好きだったトマトを選びました。
トマトを中心に育てている農家で1年間の研修を受けたのち、現在は地元の高知県で約15〜20種類のトマトをハウスで栽培しています。
糖度が高いフルーツトマトが中心で、主力は「桃太郎ファイト」や、お尻がピンととんがった「ルネッサンス」にくわえて、カボチャの形に似ている「牛の心臓」というトマトも自慢です。
私がいま課題に感じているのは、糖度と収量のアップです。
そのためには、光合成を活発にさせるために、太陽光があたりにくい部分の下葉を取り除いて、風通しをよくする「葉かき」が必要なことは理解しているのですが、さらに一歩踏み込んで、どういった部分に気を配って「葉かき」すればいいのかがわかりません。
糖度と収量を同時にアップさせたいなんて都合のいい話でしょうか?もし、「葉かき」に効果的な方法があるなら、コツを教えていただきたいです。
(高知県・田辺さん/仮名・20代)
櫻井杏子
株式会社INGEN 代表取締役
葉かきも潅水量の調整もほどほどに。糖の生産力を削り落とすリスクが
葉は植物にとって工場のようなものです。
この工場では光を使って糖を作っています。
つまり葉かきの目的は、光合成できるはずなのに光がなくて稼働できない葉を減らし、工場稼働率を上げることです。
しかし、葉かきのしすぎもよくありません。
なぜなら工場を減らしすぎると、作られる糖の生産力も削ぎ落とされてしまうからです。
2000年の初めごろ、トマトの「水きり栽培」に注目が集まりました。
これは潅水量を減らすことによって、トマトに刺激を与えることで果実を甘くする方法です。
しかし水を減らしすぎると、根が弱り、培地から栄養を吸収できなくなり、光合成に必要な材料やエネルギーの供給が止まってしまいます。
そして、結果として収量と糖度が落ちてしまう問題が引き起こされました。
現在は継続的・長期的にトマトの収穫を維持することを考えた場合、葉かきはあくまでも日陰を減らすことを目的にとどめ、潅水はあまり落とさないことを基本としています。
そのうえで、液肥濃度の調整や葉面散布(葉に液状の肥料を散布する作業)によって糖度を維持する方法が主流になりつつあります。
北川清生
北川トマト
トマトの葉かきは積極的に!風通しが良くなり、病気の予防にもなります
私の場合、葉の役割を終えたと判断したら積極的に葉かきを行っています。
役割を終えた葉とは、赤く色づいたトマトの下にある葉のことです。
トマトは葉が3枚でたら果房ができます。そして、成長点の花から数えて5段の果房でトマトが色づいていきます。
ですから5段✕3枚の葉で15枚葉っぱがあれば、トマトの成長に影響ありません。
葉かきを積極的にすることによって、風通しが良くなって病害虫が発生しにくくなります。
葉かきをしないと、葉かび病、すすかび病が発生しやすくなるので、くれぐれも気をつけてください。