栃木県で、年間50種ほどを自然栽培している野菜農家です。
このほど、会社員として働いていた30代前半の息子が退職し、家業を継ぐべく就農したいと言い出しました。
以前から家業には協力的で繁忙期には進んで手伝ってくれていたのですが、本格的に就業してくれるのは、親としても喜ばしい限りです。
ですが、現代の農業はまさに一寸先は闇といった状況ですし、取り巻く環境は厳しくなるばかりです。
やがて息子が続けていくのは大変だろうなと想像しています。そこで、親の下で狭い世界で仕事を覚えていくよりは、将来のためにも広い視野を持って経験を積んでほしいと思うわけです。
私がやってきたような、従来の農法や経営に偏らず、新しい時代に合わせていくべきだと考えています。
まずはゼロから修業となりますが、息子の修業をお願いしたいと思います。
知人や仕事の関係先などではなく、まったく縁がないところを希望しております。
農業全般について、基礎から幅広く学べるような学校や研修先、費用などについても教えてください。
(栃木県・金子さん/仮名・60代)
伊東悠太郎
水稲種子農家
親子でビジョンを共有し、将来を見据えた計画的な研修を
息子さんのお申し出は、非常に喜ばしい話ですね。ではまず、息子さんがどういう農業経営を目指すのか、親子で話し合うことが重要です。
自然栽培か土地利用型作物か、大規模志向か直売志向かなど、方向性を明確にするとよいでしょう。
同時に、就農プランも確認します。目指す農業経営に向け、すぐ行動するのか何年がかりでもいいのか、また研修期間はどれぐらいにするかも決めましょう。
それらが明確になれば、どこで、どんな内容を、どれのように研修すべきか見えてきます。
トマトだけを習いたいのかキュウリも習いたいのか、あるは幅広く野菜全般を習いたいのか?学びたいのは理論や経営か実地研修希望か、農業をしながらの研修か学生として学びたいのか?などです。
数か月ほどの短期であれば、JAや農業改良普及センターなどでも講習がたくさんあると思います。
また、農業経営塾もほぼ全県で開講されており、比較的安価で時間や回数も多くないはずです。1年ほどの中期~複数年の長期であれば、ほぼ全県にある農業大学校でも多彩なカリキュラムがあります。通常の入学以外に、社会人として働きながら学ぶ方法もあるようです。
もっと実践的な内容希望であれば、インターン生や研修生を受け入れている農業法人を探すのも一案です。
費用は無料からそれなりの金額を学費として払うケースがあるでしょう。農業法人であれば、一定の条件はありますが、新規雇用就農者向けの「農の雇用事業」の制度を利用することも考えられます。
相談者様の場合、一定の条件はありますが、「農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)」が合っているかもしれません。お近くのJAや農業改良普及センター、市区町村にご相談なさってはいかがでしょうか。