親元で就農し家族とパートさんで稲と野菜を作っています。
代々続く農家なので、小さいときからいずれは家業を継ぐつもりでいました。
来年、息子が高校受験生になるので、家族で息子の進路のことについて話す機会が増えてきました。
私たちの住んでいる地域には農業高校というのがあるのですが、どのようなものなのでしょうか?
私は普通の高校、大学に行かせてもらい、周りにも農業高校を卒業した人がおらず、農業高校と普通の高校との違いがわかりません。
もし息子に合っているようなら、学校を選ぶ際にすすめてみたいのですが、農業高校の特徴やメリット、デメリットを教えてください。
また、全国にも農業高校はそれなりにあるようです。
でも、卒業生は農業に携わっているのでしょうか?卒業後の進路も教えていただきたいです。
(富山県・澤谷さん/仮名・40代)
A.B.先生
農業経済学が専門の大学の名誉教授
技術教育が中心です。本人の意向と将来の可能性を見据え進路選択を
農業高校や農業大学校は全国各地にありますが、教えることは栽培技術に関することが中心です。「農業には経営や簿記の知識が必要」という認識は広まっていますが、学校ではあまり重要視されていないのが現状です。
農業の後継者を目指すのに、農業高校や農業大学校での職業教育もいいですが、一般の高校や大学が不利というわけでもありません。農業技術などは、卒業後や、就農してからでもオンラインで学べる時代です。
むしろ、経営などの社会科学系を学び、技術は就農してから習得するという考え方もできます。また、英語などの人文学系、数学などの自然科学系の学問も、仕事や人生に無用ではありません。
とはいえ、一般の高校や大学に進学すると、他の仕事が視野に入ってくるので、後継者を期待する親としては心配なところですね。
しかし、私の経験から言うと、このルートを選択することで経営の重要さを理解し、簿記を含め必死に勉強するようになる学生は少なくありません。販売や市場がどう展開するかなどと、幅広い認識も得られやすいです。
それぞれ特徴があり、メリットとデメリットがあります。本人の意志、親の期待もあるため、話し合いは欠かせません。不安を抱いたまま無理に職業教育に押し込むのは、逆効果でしょう。
ただ、最近の農業高校や県農大も、技術だけでなく、経営や市場開発系カリキュラムを学べる講義も増えています。在学中にじっくり将来を考えることが可能です。
そのためにも、オープンキャンパスに参加したり、高校で教える科目などを調べるなど、進学先の研究をしてみてください。農業高校、県農大のいずれの教育機関でも、非農家出身が増えていますし、すぐに独立するのではなく、卒業後は農業法人に勤務することを検討する人が考える人が増えています。
一方で、社会科学系の大学を卒業した後に親元に就農したり、その前に先進的な法人に雇われて研究生活を経た後に、親元に戻る事例も多くみられます。大学の農学部に進学して、就農技術を学ぶのも選択肢です。農業経営に関する科目は他の経営学部や経営学科に所属していることが一般的ですが、大学ではそうした単位をとることもできます。
卒業後に就農を予定しているのであれば、年間150万円、給付期間が最長2年にわたる「就農準備資金」という国の制度があります。これは農大など(他にもあるので)に入学した後に申請する必要がある農水省の制度で、親に負担させず勉強できる人材投資資金準備型の給付金です。(就農しない場合は全額返金)。
県農大の授業料や寮費は少ないので、余ったお金は就農のために貯金しておけます。在学中に機械の購入や畜産、果樹などの準備にあててもいいのです。なお申請の前年の家族の所得総額が600万円を超える場合は、申請できないので注意が必要です。
県農大は一般高校からも進学できますし、就農時に49歳以下であれば、どなたでも勉強できますよ。選択肢はいろいろあります。