近隣の大学で、農作業をお手伝いしてくれるボランティアの学生スタッフを募集させてもらえることになりました。
各農家が作成した募集要項を学校の掲示板に張り出してもらい、それを見た学生さんから農家へ直接問い合わせや応募が来るという流れです。
同じように募集を出した近所の農家には数件の応募があったようですが、うちには問い合わせすら来ません。
ボランティアなので、他より少し時給を上げるという告知はできません。どのようにアピールすれば、学生さんは応募してきてくれるのでしょうか?
募集要項を作成するうえでの注意すべきポイントがあれば、教えていただきたいです。
ちなみに大学は共学で、農学科など農業に関係するような学科はありません。
(北海道・中本一彦さん/仮名・40代)
小川繁幸
東京農業大学 准教授
仕事の役割と責任をはっきり示し、学生の将来にも活かせる場としてのPRを
相談者さんの近隣に大学があるのは、営農されるうえでとても強みだと思います。
農業のサポーターとして、大学生の存在はとても魅力的ですよね。
短期労働力としても、また、農業ボランディアをきっかけに新規就農に関心をもち、そのまま地域農業の担い手として定着してくれる可能性もあります。
私が所属する東京農業大学オホーツクキャンパスの周辺の農家からも、大学宛てに求人広告や農業ボランディアの相談が来ます。
大学としては地域に貢献したいので積極的に学生にも情報提供しておりますが、当の学生たちはというと、大学から紹介する情報にはなかなか食いつきがよくない一方で、学生間による情報にはとても敏感というのが実情です。
また学生の間には、先輩から脈々と受け継がれた農家バイト専門の幹事のような者がおり、「お世話になっている農家のためなら」と、まるで人材派遣会社のように、農家からの「何日に、何人必要」といった依頼に応えています。
スケジュールを組みながら、何とかアルバイトやボランティアをしてくれる人を集めようとしているんですね。
学生間で友達の友達を紹介したり、後輩を勧誘するなど、学生幹事と農家との信頼関係は絶大。これが、地域の農業を支えることにもつながっています。
さて、どのように若者にPRしたら良いかということですが、ポイントは2点あります!
ひとつは、学生の口コミで広がっていくような「良い農家」になること。もうひとつは、学生の社会貢献欲をくすぐるような広告を出すことです。
学生の動きを観察すると、ふたつの同じような仕事内容で、時給が同じようなアルバイトがあった場合、積極的に学生とコミュニケーションをとっている農家さんの求人に学生が集まっているように見えます。
そういった農家さんの特徴は、「あれして」「これして」というように、ただ単に作業を指示するのではなく、「なぜこの作業をするのか」とか、「この作業をしないとどうなるのか」といった理由や効果をきちんと説明しています。
そうすると、単純作業ではあるけれど、とても大切な作業であることが学生に伝わり、「仕事の責任の重さ」を理解してもらうことができます。
学生に仕事の役割と責任を明確に示すことで、その仕事が単純な作業ではなく、農家から任せられた大切な仕事となり、農家への尊敬と信頼につながり、学生のやりがいになっていくのです。
仕事を任せられた学生は、その農家を「いい農家」として友達などに話すため、これが噂となり学生間に広まって行きます。
逆に、単純に労働力としてしか学生を見ていない農家は、学生とコミュニケーションをとらず、学生にとって農家から指示される作業は重労働にしか感じられないようです。
また、ボランティアを募集したいとのことですが、今の学生は社会的貢献に繋がる活動にとても敏感ですので、農家のために役に立ちたいという思いから農家バイトやボランティアを希望する若者が多いように見受けられます。
そのため、学生へのアピールを上手にするためには、まずは“困っているから助けてほしい”ということを明確に伝え、今の若者の社会貢献欲をくすぐるような募集が必要だと思います。
単に作業ボランティアを募集するのではなく、農業のノウハウや美味しい野菜の見分け方を伝授するといったような、ボランティアに参加することでの特典も設けるのもおすすめですよ。