私は北陸地方で、根菜類や馬鈴薯を生産しています。
最近、仲間から「援農ボランティア」というものがあると教えてもらい、気になっています。
参加する人も受け入れる農家にもメリットがあり、満足度が高いとの噂です。
確かに、土と無縁の都会の人たちにとって、農作業体験や農家との交流は楽しいのでしょう。
我々にとっても、若い人手が欲しいので、手伝ってくれるのは嬉しいことです。
ボランティアということは、お金を支払う必要がないと思うのですが、他人様に手伝ってもらう以上、何かお礼をするべきじゃないかと考えています。
食事や軽食、交通費などは用意したほうがいいのでしょうか?
また、屋外での肉体労働なので、保険は必要ですか?安全管理やリスク管理をしっかりして、良い方に来ていただきたいです。
そういう人の探し方、来ていただく頻度の相談方法なども教えてください。
(北陸地方・内堀さん/仮名・50代)
江城嘉一
YUIME株式会社 取締役 人材支援事業統括
あくまでもボランティア。本業のマンパワーとして期待しないよう目的を明確に
ご承知の通りに、全国の多くの自治体で、「援農ボランティア」や「農業サポーター」などといった制度が実施されています。ご心配されている保険については、行政が主体の事業であれば、市町村が「ボランティア保険」に加入しているケースも多いです。
また、全国農協観光協会では、農業ボランティアといっても、参加者が旅行代金や保険料を負担するものもあります。りんご収穫体験などの農業体験ができるため、「お金を払っても参加する価値がある」と思う都会の方が少なくないのです。
受け入れ側である農家にとってボランティアを考えると、あくまでも技術のない素人となります。強く指導することも難しいですし、必要なときに来てもらえるわけでもありません。さらに、ケガなどのリスクもあるため、誰でもできる簡単な作業しか任せられないし、営農計画が立てづらいなどのリスクもあります。
都市に住む人にとって「土に触れる喜び」や「農業者との交流」は、確かに魅力がありますが、やりがいだけで人を集めるのは難しいと思います。農業に対する意欲がある人に働いてもらいたいなら、最低限の賃金は支払うべきですし、仕事を通じて成長を実感できるキャリアプランを提供してあげるべきではないでしょうか。
そうすることが、ひいては農業全体のイメージアップにつながるのではないかと考えます。私のこれまでの体験から申し上げると、やりがいだけで働いていると、努力に対する評価が得られず、ある時何かのストレスをきっかけとして「燃え尽き症候群」に陥る可能性があると思います。