静岡で父と一緒にいちごやメロン、ほかには枝豆などを中心に栽培しています。
父はおいしいものを作ることだけを考えて農業をしてきたようですが、私はもっと自分が手がけた作物を世の中に広げていきたいと思っています。
最近、小学生時代の同窓会で、ホテル経営者の息子から、ウチの農園のいちごを使ってオリジナルのジャムを作りたいと持ちかけられました。
そこで、いちごを提供してシェフと一緒に試作品を作ったところ、なかなかの好評。そればかりか、いちごだけではなく、ほかの果物を使って、さまざまなジャムを作っていくことになりました。
そこで商品名が必要になったのですが、ホテル側からは「作り手の農家の意見を尊重したい」として、私に商品名を考えるよう丸投げされました。
嬉しいやら、とまどうやら。せっかくなら、地域名を入れるようなありふれた名前にはしたくないのですが、悲しいかな、平凡な名前しか浮かんできません。
プロの方にぜひ商品名をつけるコツを教えて欲しいです。
(静岡県・望月さん/仮名・40代)
本多英二
aula brand design(アウラブランドデザイン)
言い換え、ユーモア、言葉遊び!ネーミングは真面目にふざけましょう
「名は体を表す」と言います。その商品が何ものであるかを一目で知らせるものですが、腕の立つコピーライターでもない限り、短いネーミングでそこまでの理解を期待するのは厳しいでしょう。
私が心掛けているのは、お客さんに「!?」と気に留めてもらうことです。
売り場でお客さんの足を止めさせたり、ネットで目を引くことができれば良しとする考えです。そこから先のことは店頭POPやWebサイトの説明に任せるようにしています。
気に留めてもらうコツはいろいろありますが、その一つに「言い換え」があります。例えばトマトでいえば、「闇堕ちトマト(by曽我農園)」です。
水やりをひかえると出てしまう「尻腐れ」という生理障害で黒いアザが出てしまったものを言い換えたものです。
「ん? 闇堕ちってなんだ?」と思わせますよね。
ほかにも、中身は一級品と同じように美味しいけれど、表面の網目に乱れがあるメロンを「中身美人(by一果相伝)」と言い換えた例があります。
お客さんは 「なるほど、うまいこと言ったな(笑)」と微笑んでくれることでしょう。いずれもありのままの姿を魅力的に言い換えています。
もう一つの処方は「ユーモア」を取り入れることです。
ネーミングではないのですが、今も名コピーとして語り継がれているのが大塚製薬オロナミンCの『どうせ飲むなら』です。
自らの商品を“どうせ”とおとしめて謙遜しながら自虐的に表現することで、親近感を与えています。
さらに言葉の表記を効果的に利用する方法もあります。エナジーブランド社ビタミンウォーターの『なにかにキクぜ。』です。
○○に効くとは謳えない薬事法の裏をかいて、“なにか”と大雑把に言ってしまうしたたかさに感心させられます。
お客さんの想像力を刺激し、商品の魅力のスキマをお客さんに埋めてもらうやり方です。
単に耳あたりが良く、きれいに飾った言葉は印象に残りません。ちょっとヘンテコで、意外性のある面白い名前のほうが覚えてもらえます。
ネーミングを考えるときは背伸びをせず、“真面目にふざけて”ください。