東京で、父と一緒に小松菜といちごをハウス栽培しています。
1980年頃から、いちごの自然受粉を促しながらハチミツが採れるのを魅力に感じて、養蜂の届け出をして西洋ミツバチを飼い始めました。
巣箱はハウスの片隅とマンションの屋上に設置しています。
ミツバチたちが頑張ってくれるおかげか、人工授粉をしなくても形の良いいちごが獲れていました。
しかし1990年代に入ってから、女王蜂を残してミツバチが集団失踪してしまうことが発生するように……。
今では、副産物のハチミツを楽しむどころか、いちごの収穫量まで少なくなる年もあり、このままでは経営にも悪影響が出てしまいそうです。
収量をアップさせるためには、ミツバチによる自然受粉はあきらめて、人工受粉に切り替えるべきでしょうか?
(東京都・立花さん/仮名・40代)
光畑雅宏
アリスタ ライフサイエンス(株)マーケティング部 プロダクトマネージャー(送粉昆虫担当)
マルハナバチやヒロズキンバエを併用して、ミツバチの訪花を補完してみては
2012(平成24年)年に改正された養蜂振興法に基づき、ミツバチ群を1群でも庭先等で飼育される場合には届け出が必要となりました。
イチゴやメロン等の受粉で利用し終わったミツバチを庭先などでそのまま維持される場合も同様です。
そのため、私からの回答は、相談者さまが最寄りの家畜衛生保健所にミツバチ群飼養の届け出を出されていることを前提としていることをご了承ください。
最初にイチゴの受粉についてお話しいたします。イチゴには有効な人工受粉手法はありませんので、ミツバチを含めて何らかの送粉昆虫(花粉媒介昆虫)の力を借りなければイチゴの結実は望めないでしょう。
現在、イチゴの受粉に利用されていて、かつ入手可能(=商品として流通)な送粉昆虫には、従来から利用されているミツバチのほか、マルハナバチ(在来種クロマルハナバチ製品は外来生物法に基づく許可取得は不要)と、活動に紫外線を必要としないため日照不足でも訪花可能なヒロズキンバエがあります。
相談者さんが管理されているミツバチ群だけではイチゴの受粉が心もとないのであれば、マルハナバチあるいはヒロズキンバエの併用をご検討いただくのもいいかもしれません。
近年では、ミツバチの訪花活動が鈍る雨天時や厳寒期などに、マルハナバチやヒロズキンバエを併用することで訪花を補完して収量を安定あるいは増加する技術が一般的になりつつあります。
ヒロズキンバエは防除時の化学農薬の併用などでミツバチとは異なる留意点がありますが、マルハナバチはミツバチと同じハチなので管理方法に共通点が多く、ご利用いただきやすいのではないかと思います。
次に、ミツバチの飼養場所についてですが、残念ながら都内(23区)はミツバチの飼養に向いている土地柄とは言い難いでしょう。
生態学の分野では、日本の平地の夏はミツバチの餌となる「花」が少ないことから「緑の砂漠」と表現されることがあるほどですので、定置での管理においてはご苦労が多いと思います。
更に、近年の天候不順はミツバチのみならず、多くのハナバチにとって厳しい条件であると言わざるを得ません。
梅雨の長雨やその後に続く酷暑も大きな打撃を与えますので、暑さ対策に加えて、より積極的な給餌が必要となろうかと考えます。
また、近年の冬場の気温の上昇などが要因となって女王バチの産卵が止まらないことが、多くの養蜂家さんを悩ませているミツバチヘギイタダニの防除を困難にしています。
このように夏冬を問わず温度が高くなりがちな都内でのハナバチの管理は、地方と比較して深刻な事象が多いと考えられます。
まずは酷暑期の対策として、巣箱の移動が可能なら木陰などを利用して少しでも涼しくしてあげてください。
また、餌資源となる花がある場所に蜂場を確保することも改善の一歩ではないかと考えます。東京・神奈川近辺の夏期の蜜源として期待できるのは、カラスザンショウやイヌエンジュなどではないかと思います。
具体的な対策を示すことができずに申し訳ございませんが、参考にしてみてください。