栃木でいちごを育てています。
これまでいちごの受粉は「確実に成功させたい」という思いから人工でおこなってきましたが、間口6メートル×奥行き50メートルのビニールハウス数棟の受粉を1人でおこなっているため、負担が大きく、花粉交配用の蜂を導入しようかと検討しています。
人工授粉もメリットはありますが、蜂のほうがキレイにむらなく受粉してくれるという話も聞きました。
私が育てている栃木のいちごはどれもブランドもので、味と同じくらい見た目にもこだわって育てています。
蜂の受粉方法にすると奇形果が減るかもしれないと知り、その効果にも期待しています。
さらに調べてみると、受粉用の蜂にもいろいろな種類がいることが分かりました。
インターネットでも買えるようですが、寿命が短くないかどうかも気になります。受粉を成功させるためにはどの種類の蜂を導入するのがおすすめですか?
(栃木県・小山内二郎さん/仮名・40代)
齊藤雄紀
株式会社ビーコンシェルジュ
花粉交配用の蜂のおすすめは、手に入れやすく扱いやすい「クロマルハナバチ」です
現状、花粉交配用の蜂として日本で比較的手軽に入手できるのは「セイヨウミツバチ」と「クロマルハナバチ」の2種類に限られます。
そのうち扱いやすいのは、クロマルハナバチです。比較的生産数や価格帯が安定していること、低温でも飛べること、長期間の輸送に耐えられることなどが、その理由に挙げられます。
クロマルハナバチのデメリットとしては、常に人間がエサを与えなくてはならない、使用後は確実に全員を殺処分しないといけないという点です。
蜂のお世話に少し気を使う必要がありますが、生産性は高いと言えるでしょう。ちなみに、刺されるとミツバチの3倍位痛いのでご注意ください。
ただ、セイヨウミツバチがダメということではありません。
セイヨウミツバチには巣の中にエサをため込む性質から、エサやりの管理が比較的しやすいことや、クロマルハナバチより長めに働いてくれるなどのメリットがあります。
移動ストレスに弱い点、毎年価格変動が激しい点が気になるところですが、逆を言えばクロマルハナバチより安く出回るケースもあります。
これらの特徴を踏まえて、まず最初はクロマルハナバチを使ってみるのが良いのではと思います。
そして期待した効果が得られなければ、セイヨウミツバチに変えてみてはいかがでしょうか。
株式会社山田養蜂場
株式会社山田養蜂場
初期は「近隣の養蜂家からのミツバチレンタル」と「クロマルハナバチ」の併用がおすすめです
日本には、約400種のハナバチが生息しており、施設栽培のいちご受粉に使用できる蜂は、「クロマルハナバチ」「セイヨウオオマルハナバチ」「ニホンミツバチ」「セイヨウミツバチ」の4種です。
入手方法や管理面を考慮すると、おのずとクロマルハナバチ(以下、マルハナバチ)とセイヨウミツバチ(以下、ミツバチ)に絞られます。
どちらもおすすめですが、初心者のうちは「近隣の養蜂家からのミツバチレンタル」と「クロマルハナバチ」を併用しながら上手く使いこなすのが良いと思います。
蜂による受粉は、コスト的にも作業的にも、実際に試しながら自分に合ったより良い方法を確立していくことがポイントです。
そういった意味でも、初心者の方は信頼できる養蜂家を探して、お持ちのハウスに適した蜂をレンタルするのがおすすめです。
また、ミツバチ不足でミツバチの入手が難しい年や、海外からマルハナバチを輸入できない年も今後あるかもしれないことを考えると、両方使用できる能力を身につけておくことは強みになります。
周囲の農家さんとコンタクトを取って情報交換することも有益になると思いますので、ぜひ相談してみてはいかがでしょうか。
蜂にとって良い環境を作ることが受粉効率を上げ長持ちさせるポイントとなりますので、導入時にはハウス内の環境も考慮してご検討下さい。
なお、どちらの種類も刺される可能性があり、それらの種の蜂毒中のタンパク質にアレルギー体質があれば重篤な症状になる可能性があります。
複数のアレルギー体質をお持ちでしたら、事前に血液検査をしておくと安心です。
同時にいちご摘みを行う観光農園であれば、お客様が刺されないように配慮するのはもちろんのこと、万が一刺された後の対策も講じておきましょう。