秋田県で、高齢の両親と一緒に米農家を営んでいる51歳です。
受験生の中学3年生の息子の進路について、当然公立高校に進学するのだろうと考えていました。
しかし、農業高校を受験したいと相談されました。
これに対して、事務のパートをしている妻は大反対。
息子は学校の成績がよいのだから普通の進学校に進むべき、まだ若いうちから農業を志すのはもったいない、将来、農業で苦労してほしくないというのがその理由です。
確かに私自身も、高校や大学で農業の専門的な勉強をしたことはありませんが、特に問題だと感じたことはありません(専門的な学校に行かずとも就農できることは分かっています)。
それでも息子の意思を尊重してやりたい、という気持ちはありまして…。
なんとか妻を説得できる方法はないでしょうか。
ちなみに妻は口ばっかりは達者で、しかも頑固。農業については全否定で、農業を手伝ったこともありません。
(秋田県・大山さん/仮名・40代)
A.B.先生
農業経済学が専門の大学の名誉教授
農業高校で得る知識は将来的にも有益なことを理解してもらいましょう
相談者さんの息子さんが若いうちから農業を志すことは、農家の後継者不足が社会問題ともなっているいま、とても素晴らしいことだと思います。ぜひ息子さんの意思を尊重したいところ。そのためには奥さまの説得ですよね。
まず、大前提なのですが、奥さまは農業高校=農業しか学ぶことができない、と誤解してはいないでしょうか。確かに農業高校は農業に関する基礎的な知識や技術を学ぶ場所ではありますが、国語や数学、外国語など、普通科の高校と同様のカリキュラムも存在しています。もちろん学力が低下する、なんてことはありません。
また、卒業後もすぐ就農するわけではなく、大学などへの進学率が年々増加しています。つまり、農業高校に進学することが息子さんの一生を決める、ということはありえませんので、ご安心ください。
次に、奥さまを説得する材料は、お子さんが農業高校で農業を学ぶことの将来性です。農業高校には一般的に「生産技術・経営系」「資源活用・ヒューマンサービス系」「環境技術・創造系」の3つの学科が設置されています。
この中でも、農業経営を学ぶことはとても意義があります。こうした知識は普通科の高校で学ぶことはできませんし、普通高校から一般の大学、という路線で農業経営者になる人が増えている現状を考えると、息子さんはそうした人たちより一歩も二歩も先を行くことになります。もちろん農業経営の知識は農業以外でも活かすことができます。
私は農業経営者と話す機会が多くありますが、多くの農家が原価計算などを長年の勘や経験に頼っているのが現状で、生産原価や農機具の稼働時間ごとの減価償却費、作業者の労働時間などに無頓着な人も少なくありません。そうしたことを農業高校で若いうちから学べるのは、素晴らしいことです。
また、農業高校では、さまざまな資格にも挑戦できます。例えば、在学中に農業簿記検定を取得すれば、相談者さんの青色申告を助けてもらうこともできますよ。これは本末転倒かもしれませんが、農業高校に通うこと=自分たちにもメリットもある。ということを奥さまにも理解してもらえたら、形勢も逆転するのではないでしょうか。