8棟のハウスで、大きさや糖度の異なる5~8種類のトマトを作っています。
最近では価格をある程度コントロールできることに魅力を感じて、JAに出すよりも小売店に卸す量を増やしています。
そうなると「同じ品種であれば有機栽培や減農薬のほうが引きが強い(よく売れる)し、価格を少し高めに設定できるな」と感じるようになってきました。
本格的に有機栽培の認定を取らなければとも考えています。
うちの畑では、これまでにも連作障害を出さないように、堆肥を撒いてきました。
しかし堆肥は10aあたり数トンもの量をまく必要があり、しかもハウス内なので重機を使うのも難しいことから、毎回なかなかの重労働です……。
とはいえ、「有機JAS認定」されたものだとしても、化学肥料を使うのはちょっと違うなと思っています。
通常の堆肥よりも量が少なくて済んで、かつ化学肥料ではなく天然素材でできた土壌改良材を探しています。
何かいいものはありませんか?
(埼玉県・辻さん/仮名・60代)
北川清生
北川トマト
作業は重労働ですが植物性堆肥の多量施用をおすすめします
私は土を信じてトマトを育てていますから、的確なアドバイスができるかどうかは疑問ですが、参考までにお話しさせていただきます。
初めに、私は土壌微生物がたくさん住んでいる「山の土」を理想にしています。
そのため、ハウス内の土作りは土壌微生物を増やすことを基本としており、植物性の完熟堆肥を毎年10aあたり5t投入しています。
植物性の完熟堆肥は、腐植(土壌中で動植物が不完全に分解してできる黒褐色の有機質)が多く、ミネラルもたっぷりと含むため、土壌微生物の増殖に役立つからです。
完熟堆肥の原料には、身近にある枯れ草、モミガラ、コメヌカ、土着菌を使っていましたが、今は菌床を使用していきます。
菌床はほとんどお金がかからないので、皆さんも積極的に使用したほうがいいと思います。
私は10年以上にわたってこの独自の土作りをしていますが、おかげさまでトマトの追肥をしたことがありません。
なお、私のトマトは8月下旬定植、翌年7月収穫終了の作型です。
お金を出せば、人工的に作り出した「少ない量で土の質が良くなる堆肥」を購入することはできると思いますが、それはあまり感心できません。
人工的に作った堆肥を使うことには、何かしらのリスクが伴うはずだと考えているからです。
やはり、土壌中の有機物を土着菌で発酵させて堆肥にするやり方が、一番自然でいいのではないでしょうか。
おいしいトマトを作るには、いい土作りが重要です。そしていい土を作るには、たとえ作業が重労働であっても、植物性堆肥の多量施用が重要であるというのが私の持論です。
余計なこともたくさんお話ししたと思いますが、また何かあればご相談ください。
和田美由紀
雪印種苗株式会社研究開発本部
緑肥としてソルガムをすき込めば、労力を減らせるうえにセンチュウの抑制効果も期待できます
ハウスでのトマト栽培は、休閑期が夏のごくわずかな時期に限られるかと思います。
相談者さんは天然素材の土壌改良剤を探しているとのことですが、堆肥にこだわっているのでなければ、緑肥を採用してみてはいかがでしょうか。
緑肥ならハウス内で栽培してそれを土にすき込めばいいので、外部から持ち込む労力はかかりません。
緑肥のなかでも、有機物量を豊富に確保できるのがソルガムという種類の緑肥です。また、そのなかでも「つちたろう」という商品を選んでいただけでば、トマトに被害を与える「サツマイモネコブセンチュウ」の抑制効果も期待できます。
これは6月以降にハウス内で40日程度栽培すれば、草丈は150cm程度、乾物収量(水分を抜いた収量)は500〜600kg/10a程度になりますので、堆肥の代わりとして十分ではないでしょうか。
ただし緑肥は、栽培・腐熟させる期間が必要になりますので、トマトの収穫を従来よりも早く切り上げたり、定植を後ろにずらしたりと、作型に影響を及ぼす可能性が出てきますので、その点はご注意ください。