今ある圃場(ほじょう)の隣にある休耕地をタイミングよく購入することができたので、農地を拡大することになりました。
あまりお金をかけられないので、業者に頼まず自分で土壌改良と思うのですが、石灰資材を撒いて混ぜ込むくらいで大丈夫でしょうか?
休耕地とはいえ、3年前までは野菜を作っていた土地で、除草剤などは撒いていなかったそうです(その代わり、雑草は生え放題でしたが)。
ちなみに私の圃場では、慣習的に、毎回作付け前に石灰資材をまいていました。
しかし、実は私もやる意味をよくわかっていません。
(群馬県・鈴木さん/仮名・40代)
村山邦彦
伊賀ベジタブルファーム株式会社
水はけと地力に配慮したうえで、phと養分を調整して
休耕地を土壌改良して畑にする際には、3つのポイントを気にするとよいでしょう。
1つめは「排水性を改善する(物理性)」。土壌改良で最も基本になるのが、土の水はけ、水持ちと大きくかかわっている「物理性」です。
水抜けが悪かったり、逆によすぎたりするような畑では、作物を安定して生産することは難しくなります。
地下水も含めて、どこから水が流れ込み、どこへ出ていくのかを意識したうえで、暗渠(あんきょ。主に排水を目的として地上に出ている部分を開け放した水路)や明渠(めいきょ。地中に埋設した水路)をつくったり畝(うね)立てをしたりすることを検討してみてください。
あまりに土質が偏っている場合には、外部から土を投入すること(客土)も考えます。
2つめは「地力をつける(生物性)」。排水などにある程度めどをつけられたなら、次に考えていくのが「生物性」です。
よい土は、一般的には多様な有機物や微生物を含んでいます。また微生物の活動の果てに最終的につくられるとされる「腐植」の存在も大切です。
こうした土の基本的な力は、一朝一夕につくわけではないことも多いですが、耕作放棄地を利用する場合はまず、良質な有機物や微生物源を投入することを検討してみてください。
今回のケースでは雑草が生え放題だったとのことなので、すでにある程度の有機物が土に含まれていると考えられますが、宅地など草も生えていないような土地を農地化する場合には、まずは土に還すためだけに草などを育てる場合もあります(緑肥)。
3つめは「土壌養分のバランスを調整する」。まずは「物理性」と「生物性」に十分な配慮をしたうえで、土に含まれる養分の調整を行うことになります。
ここではph(酸性なのかアルカリ性なのかを表す度合い)と、石灰、苦土、カリのバランスがとりわけ大切になるでしょう。
耕作放棄されていた圃場(ほじょう)の場合、こうしたバランスが大きく崩れていることが多いので、不足している養分の補給を行います。植物が育つ上で、土壌にちょうどよい量の養分があると生育がスムーズになります。
質問者さんは「慣習的に、毎回作付け前に石灰資材を撒いている」とのことですが、日本の多くの土壌は石灰が不足しているので、同様に「何も考えずに石灰を撒く」という対処をするケースが多いようです。
しかし場合によっては、石灰を入れすぎて土壌のphや養分のバランスがくずれ、作物がうまくできなくなって畑をやめた。というケースもないとは言えません。
あくまでも、事前に自分の土壌のphや養分などを分析した上で必要分を補っていく、というやり方がおすすめです。