愛知県でにんじんや玉ねぎ、ほうれん草などを育てています。
できるだけ病気の発生を抑えて土壌のパワーを回復させるために、農閑期にフスマや米ぬかを使って土壌消毒をしています。
具体的には、10アールに対してフスマを400キログラムほど、米ぬか(脱脂ぬか)を300キログラムほど混ぜ合わせ、さらに水を大量に与えています。
問題なのは、10日から2週間ほどでかなりの悪臭(まるでドブのような臭い)が発生してしまうことです。
畑はわりと住宅街に近く、分譲住宅を建設中のハウスメーカーから、できるだけ臭いを減らしてもらえないかと相談されました。
なんとか臭いを軽減させたいのですが、どうしたらいいでしょうか?
そもそもフスマや米ぬかの混ぜている量自体に問題があるのでしょうか?それとも、なにかをプラスすると改善するのでしょうか?
(愛知県・近藤さん/仮名・50代)
吉田俊道
農業法人(株)菌ちゃんふぁーむ 代表取締役
太陽熱養生処理でドブ臭は解決します!マルチをしっかり埋めるのがコツです
そのような消毒法があることは知っていますが、私はやったことはありません。
酸欠状態にして菌を殺すという考え方からできた方法のようですが、土壌中にいる多くの有用微生物まで死んでしまうと思います。
私のところでは土壌中の有用菌たちを増やすという考えで行っております。
表面の雑草種子だけを死滅させ、表面以外の土壌中の微生物を活性化させ、その時に発生するCO2で土を軟らかくする「太陽熱養生処理」を少しアレンジする形で行っています。
「太陽熱養生処理」で検索してみてください。詳しい方法が紹介されています。
一般的に「太陽熱養生処理」では微生物のエサとして中熟堆肥を使いますが、うちではそれが入手困難ですので、以下の方法でその代わりにしています。参考にしてください。
まず麦類やソルゴー、セスバニアなどの緑肥作物を育て、ハンマーナイフモアでバラバラにします。
そして、週に1回を目安にトラクターでできるだけ浅く鋤(す)き込んでいきます。露地の場合は天気を見計らってください。
だいたい1カ月を過ぎたくらいになると、緑肥作物は肉眼では土と区別がつきにくいくらいに分解されます。
そのタイミングで米ぬかをEM菌などの乳酸菌で培養した「米ぬかボカシ」と必要な有機ボカシ肥料などを散布し、今度は深く耕うんします。
これで中熟堆肥を入れたことと同等と見なし、太陽熱養生処理を実施します。
土壌水分は、還元消毒(土壌に米ぬかなどの有機物を混ぜ、ビニールで地表面を被覆して3週間程度地温を30℃以上に保つ方法)のように濡らしすぎにはしません。
しかし、乾いていると効果が減りますので、水分多めの湿った状態の時に行います。
また、透明マルチをしっかり土に埋めて、空気を漏れにくくするのがコツです。この方法なら腐敗ガスは出ないので、ドブ臭はまったくしません。有用菌でいっぱいのふかふかの土になります。
草の種は表面だけ死滅しているので、処理終了後は耕さずにそのまま播種機などを使って播種してください。
最後に補足ですが、すでに連作などで病害が発生しやすくなっている圃場の場合は、還元消毒の方が応急処置としては有効だと思います。
原田清弘
一般社団法人 京都府農業会議 京都アグリ創生 現地推進役
夏場に透明マルチを張り、太陽熱消毒をすれば悪臭に悩まされません
フスマや米ぬかなどの有機物を使って土壌消毒を行う方法は、分解工程でメタンガスが発生します。これが悪臭の原因です。
水を張って空気と触れないドブ状態となっているところに空気を入れることによりニオイは少なくなります。しかし、それでは効果が薄れてしまいます。
もし悪臭が気になるようでしたら、発酵とは無関係の夏場の太陽熱消毒を検討してください。
太陽熱利用の土壌消毒は、地表にビニールを貼り、太陽熱エネルギーによって地温が上昇することで病原菌や雑草の種子を死滅させる防除技術です。
一般的には梅雨明け後から9月上旬までの間に畝立て(20センチメートル×80センチメートル程度)を行い、土壌に水分を十分に含ませて透明マルチを張る方法です。耕運せず、その畝に種まきします。
透明マルチによって密封すると、土壌の温度は60度程度の高温となります。これを3週間程度続けると効果があります。