愛知県の渥美半島で秋から初夏にかけてブロッコリー栽培をしている農家で、選果作業に携わっています。
1月から3月までの春先は、愛知から東京の市場への出荷量が多くなって、地元での消費量をしのぐほどです。
ブロッコリーは足が早く、鮮度がいのちですから、収穫したら鮮度が落ちないよう、発泡スチロール箱に氷詰めをして出荷し、製氷設備のあるトラックで運びます。
この作業を行なっていると、いつも野菜というより海産物みたいだな扱いだなと思いますが、この氷詰めの作業で最近、悩みがあります。
先日、取引先のスーパーから「おたくのブロッコリー、たくあんみたいな匂いがするけど、発泡スチロールを使いまわしてるの?」と文句を言われたのです。
出荷前はそんな匂いはしなかったし、採りたてを出荷しているので驚きました。
いったい原因はなんでしょう?どうやったら異臭を防ぐことができるのでしょうか?
(愛知県・鈴木孝明さん/仮名・30代)
安井ファーム 選果営業部 広報課
有限会社 安井ファーム
輸送時の温度管理が決め手!レシピをおすすめしてみては?
石川県で年間190万株のブロッコリーを生産・出荷している農業法人「安井ファーム」です。
ブロッコリーは密封された発泡スチロール内など低酸素の環境下に置かれると、呼吸の際に硫黄化合物が発生し、これが匂いの原因となります。
この硫黄化合物は、アブラナ科の野菜に含まれる辛味成分のイソチオシアネートが分解されたときに発生しますが、口に入っても健康上の問題はありません。
匂いを抑えるうえで気をつける点は、温度管理です。
ブロッコリーを保管する際に最適な温度は「0度」とされており、輸送時はいかに「0℃」の環境を維持するかが課題になります。
安井ファームでは収穫後、0℃設定の冷蔵庫(自社保有)にて半日以上保管(予冷)のうえ、選果、箱詰め作業という流れを採用しております。
予冷時の環境は、温度0℃、湿度95%以上でしっかり冷やします。
出荷時は、密封されている時間を少しでも減らすため、発泡スチロールへの箱詰めはできる限り出荷直前、そして0℃保存の肝となる氷も、箱満杯になるまでたくさん入れます。
ブロッコリーの匂いは調理で低減できるので、小売店にレシピを提案してみてもよいかもしれません。
ただし、調理の際にも注意が必要です。
というのも、実は匂いの原因である硫黄化合物は、「加熱」のタイミングで生成される場合もあるからです。
ニンニクのような強烈な匂いの食材と一緒に調理するというのも一案ですが、安井ファームでは「麺つゆに一晩漬けたブロッコリーに片栗粉をまぶして、170℃前後の中温の油でカラッとするまで揚げると、スナック感覚でいつまでも飽きることなくいただける」というレシピをおすすめしています。
この調理法によって、漬物臭が気にならなくなります。以前、Twitterで紹介したところ、多くの反響をいただきました。
私たちは、ブロッコリーを生産するだけではなく、ブログやSNSを通じて、美味しく食べる方法についても発信しています。ぜひ参考にしてください。