数年前から、集落に隣接した場所で数種類の果樹を扱う観光果樹園を営んでいます。
一番民家と近い場所に栗の木が植樹されているのですが、毎年、初夏になって一斉に花が咲くと、匿名で「臭いをどうにかして!」とクレームの電話がかかって来ます。
名前を言ってくれず非通知なので断定はできませんが、多分、すぐ近くにある民家からだと思います。
当初は盗難されにくさを考えて栗の木を集落側に植樹したのですが、それが間違いのもとだったのかもしれません。
この時期だけとは言え、ご近所迷惑になってしまっていることには恐縮していますし、毎年同じようなクレームが何度もあるとこちらもストレスなので、路面栽培している立木の臭いトラブルを解消する方法があれば教えてほしいです。
(栃木県・勝間さん/仮名・40代)
祐川英基
祐川臭気コンサルタント事務所
消臭剤で対処&発生源を減らして。住民に理解してもらうことも大切です
臭気の対策というのはケースバイケースで、臭気の発生源との位置関係や地域の環境だけでなく、そのときの風の吹き具合などによっても変わってきます。
そのため残念ながら、「この方法を実施すれば必ず解消できる」といったものはありません。
臭気の発生源が工場であれば脱臭装置を取り付けて防ぐという方法もありますが、屋外の塀替わりに植えられた何本かある栗の木が発生源のようですから、それは難しいでしょう。
そこで対策として適用できそうな技術としては、消臭剤の噴霧があります。
消臭剤を効果によって大別すると、化学反応によって臭いを中和する、良い香りで元の臭いを分からなくする、元の臭いと混ぜ合わせることで臭いを相殺する、という3つの種類があります。
それら3つの消臭剤の使い方とともに、発生源そのものを取り除いたり減らしたりする方法もご提案したいと思います。
まず消臭剤を使う方法について説明します。化学反応によって臭いの成分を中和または分解したい場合、化学物質を使用したくないときには天然由来の消臭剤を選ぶことになります。
消臭剤メーカーは複数の消臭剤を用意しているところが多いので、まずはメーカーに何の臭いを消したいのかを伝えて数種類の消臭剤のマッチングテストを行ってもらい、その中から当該の臭いを緩和したり分解したりするのに適合するものを選んで使います。
ご自身で市販品の中から選んで対策するときにも、試供品を手に入れるなどして、現場で噴霧してみて一番効果があるものを選ぶとよいでしょう。
畜産農家でも飼育場で消臭剤を使う―スがあることから、畜産が盛んな地域のホームセンターなどには専用の消臭剤を販売しているところもあるようです。
噴霧方法としては、消臭剤を規定通りに希釈して噴霧器のタンクに溜め、ポンプを使ってノズルから噴霧します。
噴霧する位置は、臭いの発生源の高さに合わせます。今回問題となっている栗の花は家屋の屋根と同じくらいの高さにあるようなので、電信柱などを利用して高い位置に噴霧器のノズルを取り付け、栗の花の臭いとよく混合するように消臭剤を噴霧します。
噴霧する時間は、栗の花の臭いが影響する(もっとも強く感じる)時間帯に合わせて噴霧するとコストが抑えられるでしょう。
消臭剤を使用する際の注意点としては、消臭剤の香りを嫌う方もいるので、あらかじめ苦情者(今回の場合は、周辺住民)が容認できるかどうか意見を聞いておくことも重要です。
発生源対策としてですが、今回は栗の木が発生源であることがわかっていますので、究極的方法としてその発生源を元から取り除いたり、減らしたりする方法が考えられます。
方法としては、栗の木を別の場所に植え替えたり、切って他の果樹に植え替えたりすることになります。
全部が無理であれば、民家と隣接する場所にある木だけ、また風向き的に民家に臭いが行きそうな場所にある木だけ対処する方法もあるでしょう。
栗の花が咲くのは2週間ほどでしょうから、その期間だけ花の臭いが流れないように花の部分を袋などで囲ってしまうのもよいかもしれません。
また日頃から近隣の方々にご理解いただけるよう、収穫した栗を近所に配ったり、栗拾いなどの体験イベントを開催して好感度を上げておいたりするのも大事だと思います。
なお、臭気対策は実際に現場を見てみないと適切なアドバイスができませんので、個別に臭気に関する相談をしたい場合には、「におい・かおり環境協会」で「におい・かおり環境アドバイザー」もご紹介しています。