原木しいたけにこだわって生産を続けています。
原木しいたけは肉厚で、色も艶のある茶褐色をしているので、すぐに見分けはつきます。
ただ、スーパーなどで菌床しいたけと一緒に並んでいた場合、一般消費者にはその違いがわかるのか疑わしいです。
今のような物価高が続くと、値段の安さで菌床の方に流れてしまうのではと心配です。
しかし、菌床に比べると出荷までにかかる年月も手間も全く違うので、安売りはできません。
少しでも原木しいたけの良さをアピールしたいので、直売所やスーパーなどに置いてもらう際は、ロウ引きの紙袋に入れていますが、販売増につながっているかどうかはわかりません。
なんとか差別化してアピールしていきたいのですが、パッケージなどの見た目のことも含めて良い方法はありますか?
(群馬県・斉藤光人さん/仮名・50代)
本多英二
aula brand design(アウラブランドデザイン)
原木しいたけの栽培環境を消費者にアピールするためのツールが必要です
かつてブランディングの仕事で菌床栽培と原木栽培のしいたけ両方を経験しました。
その折に感じたことを中心にお話しします。
ご質問にある「一般消費者には、原木と菌床栽培の違いがわかるのだろうか?」の疑問ですが、見た目で判断できる人はごく少数でしょう。
味についても食べ比べした訳ではないので「よく分からない」…。
よって消費者が量販店で購入するときの判断基準は『安いほう』に流れてしまいます。
生産者側からのアピールとして“美味しさ”が出てきますが、これも有効打とはなりません。
生で食す果物や野菜と違って、しいたけは必ず調理して食べるものですから、家庭での味付けによって食味は大幅にブレてしまいます。
“確固たる美味しい基準が無い”に等しいので、しいたけにおいて美味しさは競争軸にはならないというのが私の見解です。
そうなると、菌床栽培と原木栽培の違いを何で表現するか?
私がたどり着いた結論は「栽培環境の違いを"売り"にする」ということでした。
自然の営みに近い原木栽培、そのイメージは安心安全や希少感に繋がります。
鯛を例に挙げれば、養殖と天然モノのありがたみの違いと言えましょう。
見た目で言えば、ロウ引きの紙袋も捨てがたいですが、普通のビニール袋の中に緑の檜葉を一枚添えるだけでも原木しいたけが持つ天然感を演出できます。
菌床栽培の写真はどの施設でも均質で特徴になりません。
しかし、原木栽培のホダ木は“絵”になります。ご相談者さんのホダ木畑を素敵な写真でアピールしてみてください。
ハウス内に原木を並べておられる場合でも、ブランドのイメージリーダーづくりとして、小面積でも良いので露天で原木栽培をやってみるのも手です(現状を分からずに言っています。仮のハナシとして聞いてやってください)。
「原木栽培にふさわしい環境を探し求めて○○年、やっと巡り会えた岩手○○の地」というストーリーを構築し、露天での原木シイタケをトップに据えます。
その下にハウス原木モノを置き、価格差を付ければ商品の幅が増えカバーできる顧客層が広がります。
「安売りはしたくない」とのこと、ごもっとも。
高額商品であることをブランドの特徴にしてしまいましょう。
高価にならざるを得ない栽培方法や少ない収穫量を説明し希少感を演出、菌床栽培との差別化の道具として活用します。
ラベルの極小スペースでは説明し切れませんので、しおりを同梱したりWebサイトへ導く方策も大事です。
それらの告知ツールを使って菌床栽培に比べて高価なものになる理由を説明し納得していただけるよう働きかけます。
そして肝心なのは『どこで売るか』。冒頭にお話ししたように一般のスーパーマーケットでは安さが一番の購買動機になってしまいますので、そこに並べていても手を伸ばしてはくれません。
少々高くてもていねいに育てられた自然の恵み、原木しいたけを選ぶお客さんはどこにいるのか?
オーガニック商品を扱う店、高級スーパー、デパ地下の食品売り場、ふるさと納税返礼品、料理人との直接取引、あるいはこだわり商品が集まっているECサイトに販路を見出してください。
ご時世柄、お値打ち商品があふれるなかにおいても、価値ある商品を求めている層は存在します。見た目だけでアピールするのは難しいので、その層にどのようにして情報を届けるかが肝要でしょう。