福岡県で小松菜、水菜、オクラ、ネギ、ピーマン、じゃがいも、玉ねぎ、かぼちゃなど、10数種類ほどの野菜を栽培しています。
無農薬で育てた野菜を消費者の方々に気軽に楽しんでもらいたいので、農薬などコストを抑え、できるだけ安く販売するようにしています。
もっとコストを下げる方法はないものかと考えていたところ、畑の水道代の費用を下げることを思いつきました。
畑のそばに浅井戸を掘れば、水道代はもちろん、ホースで水やりをする手間も軽減させることができます。
浅井戸を掘るためにはどうすればいいのでしょうか?また、井戸水を使う場合には許可申請などは必要なのでしょうか?
(福岡県・山本さん/仮名・60代)
杉山 明
株式会社 アサノ大成基礎エンジニアリング北海道支社 水環境事業部 水資源グループ 理事
浅井戸専門の井戸職人はほとんどいません。独自に掘るのならば事前調査を入念にしましょう
私たちは井戸業者(さく井工事業許可業者)ですので、ご相談者さまが考えてらっしゃるような小規模の浅井戸はやっておりません。
昔はいたようですが、残念ながら浅井戸を掘る井戸職人さんもほとんどおりません。ですので、参考になりそうな井戸掘りの事例や手順などをご紹介します。
井戸の掘り方は、大きく分けて「手掘り」「ジェット掘り」「オーガー掘り」「打ち込み」「機械掘り」の5つの方法があります。
このなかで個人ができるのは「手掘り」「オーガー掘り」「打ち込み」あたりですが、それでも深くは掘れません。せいぜい3〜5メートル位まででしょう。
ちなみにハンドオーガー掘削道具とパーカッションボーリングでは、かなりの差があります。
井戸掘りで覚えておいていただきたいのは、掘ればどこからでも水が湧いて出てくるわけではないということです。
井戸を掘り始める以前には、必ず地下水の調査が必要です。
弊社では文献調査、現地踏査、物理探査、ボーリング調査、試掘の順で行っております。
しかし、個人となると簡単に地下水脈を見つけることはできません。ご相談者さまが住んでいらっしゃる福岡ですと、花崗岩の上に堆積物がのっている地質ですので、地下水事情もあまりよくないという印象です。
実際にまわりでは井戸を利用されている方はいらっしゃいますか?
もし地下水が取りやすい土地でしたら、活用されている方がいるはずですので、まずは周辺のリサーチをしてみてください。事前調査を入念に行い、実際に掘るかどうかの判断は慎重に決めてください。
「許可」については、蛇口 1 本程度、ポンプ口径25ミリメートル以下の井戸であれば、許可は不要です。
地盤沈下規制地域でもOKです。自宅からホースで灌水しているとのことですから、規模的には蛇口1本程度の水量で充分でしょう。その程度の水量であれば地盤沈下への影響もないと考えられています。
実際の井戸掘りでは、想定外の障害に直面します。労力が必ず報われるとも限りません。
私は農業は素人でよくわかりませんが、今回のご相談の場合、無理して井戸掘りに挑戦するのは大変ではないかと感じております。
もしも日中の一時期だけを乗り切ればよいのであれば、タンクあるいは池を設置して流量調整して使う方法はどうでしょうか。
原田清弘
一般社団法人 京都府農業会議 京都アグリ創生 現地推進役
井戸を自ら掘ることは困難です。まずはJAなどに相談して判断してみましょう
結論から申し上げますと、井戸を自ら掘ることは困難だと思います。もちろん地下水が必ずある、必ず出るということが確約されているのであれば別です。
しかし、それは専門的な機械や重機、知識、調査など、多角的な判断が必要になります。
業者に依頼する場合ですと、まずは水質や水量の調査が必要になります。水量については、枯渇しないか等を調査しなければ、かけた投資分が戻ってこないというようなことも十分考えられます。
また、水質についても「金気(カナケ)」と呼ばれる重金属等が含まれる場合ですと、農業では利用できません。井戸を掘る場合、そういう問題が多々起こります。
まずは地元のJAなどに相談して地下水を利用できる可能性があるのかを判断してください。可能性があるようでしたら、農業用の井戸を掘る業者に水量、水質、掘削経費の見積書をもらい、水道代等と比較されてはどうでしょうか。