もうすぐ100歳になる祖父が、体調面などの理由から農業を退くことになりました。
跡継ぎなるはずだった私の父は、数年前に病気で早々にこの世を去り、今後、農地をどうしていくかで困っています。
ほかに担い手もおらず、私は公務員で、祖父には大変申し訳ないのですが、今は農業に転職するつもりはありません。
定年退職後に始める可能性はなくもないですが、それまで手元に置いておくにも税金がかかりますし、可能ならば農地を売却したいと思っています。
農地のままだと売りにくかったり良い話にならないと噂に聞きますが、本当でしょうか?
今の農地は、農地転用が可能かどうかを知りたいです。
無理なら農地のまま売却する方向で進めますので、トラブルなく農地を売買するために注意すべきポイントがあれば教えて欲しいです。
(三重県・佐々木和江さん/仮名・40代)
田中寛子
税理士・永光パートナーズ
農地の売却は農業委員会の許可が必要。基準と審査のクリアは意外と大変
質問者さまのおっしゃる通り、農地の売却には「1、農地として売却する方法」と「2、農地を農業以外の目的で利用する(農地転用)として売却する方法」があり、いずれも農業委員会の許可が必要です。
1、まず、農地転用が可能かどうかを知るためには、管轄エリアの農業委員会へ確認をします。
農地は立地によって5種類に分類されており、そのうち「第2種農地」と「第3種農地」のみ、転用許可が可能となっています(※例外あり)。
第2種農地は、市街化近郊の農地で生産性が低いと見られている農地。第3種農地は市街化区域内の農地で公共施設などから300m以内に位置する農地、要は利益が高いと判断されている農地です。
いずれも、農地転用を許可してもらうためには、定められた基準と審査をクリアしなければなりません。
具体的には、確実に転用事業が行われるか、近隣への被害や悪影響がないか、などがチェック項目です。第3種農地は利益が高いとして比較的許可されやすいのですが、第2種農地は審査が厳しいとされています。
2、次に、農地のまま売却する場合です。現在農地は、農業に常時従事する人にしか売ることができません(農地法第3条第2項各号)。
法人の場合は「農地所有適格法人」以外は取得できません。このように買い手が限られてしまうため、売りにくいと言われています。
その他の方法として、農地を賃貸することも可能です。平成21年度の農地法改正により、要件を満たせば「農地所有適格法人」以外の一般法人へも農地の賃借が可能になりました。
農地も財産です。賃貸収入を得ながら管理、維持し、将来自分で農業を再開させるという選択肢も検討してみてはいかがでしょうか。
最後に、「2022年問題」についてお伝えしておきます。農地の税制面などを優遇されていた生産緑地が2022年に指定解除可能時期を迎えるため、2022年以降に農地の売却が増え、売却価格が下落すると予想されています。
どのタイミングで農地売却を進めるかもひとつのポイントになってくるのではないでしょうか。