青森県の葉たばこ農家です。JT(日本たばこ産業)が実施している廃作の募集にのって、葉たばこを廃作するかどうか悩んでいます。
最近、私の周りでも葉たばこを廃作している農家さんが増えてきました。
葉たばこは、種をまく段階から収益を見込めますし、JTや国の支援も整っています。
いまは息子が後継ぎとして農作業のほとんどをやってくれていますが、孫が4人いるのでまだまだお金も必要です。
そんな状況なので、今手放してしまうのは惜しいというのが正直なところです。
とはいえ、たばこ産業の衰退は目に見えて進んでいます。いつか廃作しなければならない日が来るのであれば、早いうちに廃作した方がメリットが大きいのではないかと考えるようになりました。
時代の流れに乗って葉たばこの栽培を廃作するなら、所得をなるべく下げずに、新しく作付けできる農作物を教えていただきたいです。
(青森県・木梨隆司さん/仮名・60代)
仲野真人
株式会社食農夢創 代表取締役
農作物に転作するなら営業活動が必須です。まずは情報収集から始めてみては?
昨今のSDGs(持続可能な開発目標)の普及によって、葉たばこ業界も環境や健康への配慮が求められていますね。
とはいえ、葉たばこ産業は長い間、日本の農業の一部を担ってきました。今すぐ廃業になるわけではないと思いますが、確かに転作も検討しておく必要があるかもしれません。
ご質問いただいた所得を下げずに新たに耕作できそうな農作物についてですが、正直なところ「これなら大丈夫といった農作物はない」と思います。
まず考えなくてはならないのは、葉たばこと他の農作物との違いです。
現在作られている葉たばこは毎年kgあたりの単価が決まっており、作ればその価格で買い取ってもらえますので、売ることを考えなくても良いですよね?
しかし多くの品目 、特に野菜は市場出荷は需要と供給によって値段が大きく変動するため安定していません。
そのため、今年単価が高い品目だったからといって来年も単価が高いとは限らないのです。
むしろ、生産者がこぞって高い価格の品目を作り出してしまい相場が崩れてしまう、ということもあり得ます。
また、農作物は自分で販路を開拓しなくてはなりません。
作る時間とは別に、営業する時間を作って売りに行く必要があるのです。そういったことも踏まえて、転作が可能かどうか考えてみてはいかがでしょうか。
転作の手段としては、農作物以外にもあります。
青森県であれば、にんにくとごぼうは生産量全国1位、山芋は全国2位の生産量ですよね。
例えばそのなかで、にんにくを熟成発酵させて黒にんにくに加工した商品を販売するなど「6次産業化」という形で新規事業に取り組むことが可能です。
青森県内の主要な品目であればたくさんの生産者がいるので、まずは情報を集めてみることから始めてみてはいかがでしょうか。