京都府の集落営農法人で米づくりを行っている農家です。
ばらばらに栽培していた田んぼを集積して、現在は5ヘクタールほどの広さの管理を任されています。
また、私たちの集落営農法人では、集落営農に加わっていない農家の乾燥作業や籾すりも委託で行っています。
しかし、籾すりを行った際に出る「もみ殻」が問題になっています。
毎年、田んぼにすき込むようにしていますが、分解に時間がかかるため、なかなか土に戻りづらくなっています。
2年前、もみ殻を入れ込んだ畑にプラウをかけるとそのまま出てくるくらい、分解が遅いのです。
もみ殻をうまく処理するために、何か良い方法はないでしょうか。
(京都府・枝野さん/仮名・40代)
田中大樹
Junkan農園
何か影響は出ていますか?それぞれの対処法をご紹介します
生のもみ殻が分解されず、それらが原因となり、稲の生育に悪影響が現れている。もしくは今後、悪影響が現れるのではないかというご質問でしょうか。
生の有機物が土の深い層に入り込むと、根腐れの原因になります。
しかし、現状、数年前のもみ殻が土のなかに残っていも、窒素飢餓による生育不良や根腐れなどの悪影響が確認されていないのであれば、毎年のもみ殻の投入量が、その田んぼにとっては許容範囲内ということになります。
そのため、7~8年かけてゆっくりともみ殻の分解が進んで行くなかで、地力として、稲作に還元されていると考えられます。この点は、その土壌ならではの素質ということです。
気になされるようでしたら、今後はもみ殻を1年間野積みで雨ざらしにし、雨や土からの湿度や土着菌の働きで、糸状菌の菌糸がもみ殻全体に張りめぐらされ、もみが水を弾かない状態に変わってから、翌秋に田んぼに投入する方法もあります。
こうすると、窒素分を加えなくとも、土に戻した後の分解がとてもスムーズになるでしょう。畑の土壌改良剤としても使えるものになります。
また、すでに悪影響が表れている場合は、少し費用はかかりますが、市販されている嫌気性の微生物資材(リサール酵酸社製の水田専用土壌改良資材「アイデンマック®︎」や、同じ会社の水田専用資源循環型土壌改良資材「アイデンカルス®︎」など)を活用すれば、もみ殻などの硬い繊維質を腐植質に分解させるための即効性は抜群でしょう。
大豆に転作する手段もあります。次に水田にする時までに、いつの間にか、もみ殻は消えてしまうでしょう。
私の場合は、例年7月15日の梅雨明けの時期に、私のエリアの在来種の大豆をまいています。大豆は土を肥やし、雑草のコナギを抑えますので、翌年の稲作が非常に楽になります。
以下は一般論です。
基本的には、秋処理などと言われておりますが、稲わらやもみ殻を分解するために必要な窒素分を用意して散布し、浅く耕し、微生物の発生を促す管理方法です。
稲作10アール分の、稲ワラ全量を、翌年からの地力とするためには、稲刈り後、出来るだけ地温の高いうちに、ワラを分解する微生物の活動・増殖に必要な窒素分(N成分で3㎏)を投入し、浅く耕します。
米ぬか又は鶏糞では100キロ程度(地力の低いところは150kg)となります。
どちらかではなく半々ずつの用意でもいいと思います。米ぬかは微生物を増やし、鶏糞の石灰分はワラの分解を促進します。
これらを散布し、10cm程度浅く耕します。浅く耕すことは好気微生物に必要な空気を確保する為です。
20cm、30cmの深さにワラやもみ殻が入り込むと、深さゆえ地温が下がり、空気は少なく、水分は多すぎて、分解が持ち越されてしまう原因となってしまいます。
地温が高いほうがいいのは、微生物の活動に適温が18度以上であるためです。
最後に、好気微生物の活動・増殖に好適なpH6.5に近づけるために苦土石灰(苦土はク溶性のもの)などを適宜利用することはワラやもみ殻の分解や稲の生育に有効に働きます。
さらに、もみ殻を全量、田に戻すとなりますと、ワラともみ殻のCN比はほぼ同じですから、追加で100~150kg程度の米ぬかまたは鶏ふんを散布する必要があると思われます。
もみ殻の量にもよりますが、10アール当たり約100kgのもみ殻が出ることを標準とした場合です。
投入した窒素成分は、微生物の体内に取り込まれたり、腐植となりながら、田んぼのなかで保持され、翌年以降の稲の生育の必要に応じて放出されます。
投入した窒素成分が3kgだとすると、その半分の1.5kg程度が肥料効果として現れますので、その分、翌年の元肥を減らす対応となります。
そのように考えると、稲ワラやもみ殻の年間の上限は、10アール当たり、総量で400kg以内ではないでしょうか。
秋に米糠を投入した田んぼでは微生物が増え、6月になると、水田に生息する窒素固定細菌が、空気中の窒素を固定する現象が稲の生育を支えますので、品種や生育の様子を見ながら元肥を調節します。
それでも余ったもみ殻は、くん炭にすれば、田畑の過剰窒素を吸着する資材として、地域で重宝されるのではないでしょうか。