父子親子2人で営む小さな米麦農家で、私は4代目です。小規模農園であることの強みを活かすべく、品質重視と細かい栽培管理にこだわっています。
特別栽培の米を作っており、県が定める慣行栽培の基準に対し農薬、化成肥料ともに5割減で栽培しています。
最近、隣の県では田植え後の稲が早いうちに黄色くなってしまい、さらに、分げつ(枝分かれ)が進まない症状が出て、生長不良になる例が増えていると耳にしました。
初めて聞いたときは、単純に土壌の窒素不足が関係しているのでは?と思いましたが、調査したところ「硫黄欠乏」の可能性があるそうです。
ウチではまだそのような症状は見られませんが、全国で硫黄欠乏の疑いがある事例が発生しているそうです。
硫黄欠乏に対して、今からできる対策法があれば教えてください。
(岡山県・長田さん/仮名・60代)
佐々木茂安
日本のお米をおいしくしたい。佐々木農業研究会代表/農業経営技術コンサルタント
硫黄成分の吸収を阻害する要因を除いて養分補給を。天地返しも有効です
欠乏症は、「欠乏している養分を補給すること」と「吸収を阻害している要因を除去すること」で解消します。
硫黄欠乏症は、以前は硫化水素が根を傷めるからと、塩安系(塩化アンモニウム系)肥料を多用したことが原因で増えてきたと言えます。
硫黄欠乏は、急変して起こるわけではないので、見落とすことがあります。無施肥栽培では話題になる養分です。
また、転作でアブラナ科野菜などを栽培すると、養分の持ち出しによって硫黄が欠乏しやすくなります。
「窒素欠乏と混同しやすい」ことは事実ですが、窒素肥料を追加しても充分な効果が得られない場合は、硫黄欠乏を疑っても良いと思います。
欠乏症を確認するための手順や対策は、次の方法が簡単なのでオススメです。
1、次のポイントをチェックして、吸収が阻害されている要因を探ります。
・土壌中の酸欠によって、根が伸びない状況になっていないですか?
・株元が黒く変色している場合、根の伸長に阻害要因がある可能性があります。
・石灰を多量に撒くなど、土壌phを上げている場合、根の周りに酸化鉄がつきにくくなって還元障害を起こしやすくなります。
・代かきを丁寧に行うと、土壌中の酸素を追い出しているので酸欠になります。
・徒長苗などは、植え痛み(生育が止まったり、葉が落ちて枯れたりする)を起こす原因になるので、健苗を用いましょう。
・深植えすると、発根部分の温度が上がりにくいので、浅植えしましょう。
・深植えは発根部分に酸素が行き渡りにくいため、発根や分げつを抑制する要因にもなります。
以上のチェックポイントに問題がなければ、硫黄欠乏症を疑ってください。では次の作業です。
2、硫黄資材を使用します。
・硫黄の入った肥料や資材を使用します
・窒素肥料としては「硫安(硫酸アンモニウム)」があります
・土づくりの資材には、硫マグ(硫酸マグネシウム)や硫黄粉末など多数あります
・肥料の表記は保証成分を示しているので、硫黄の成分までは書かれていませんが、鶏糞などにも少なからず含まれています
・欠乏症に対しては過不足症状がでやすいので、できるだけ有機質資材を使用し、単肥を避ける方が良いでしょう。
3、プラウによる天地返しをしましょう。
・土壌養分には、水の移動にともなって地下に溜まるものもがあります。これを地表面に戻すのが天地返しです。
・硫黄は、硫酸鉄など水に溶けやすい化合物もあるので有効です。