うちは家族で農家をしていて、2反ほどの圃場で根菜類を栽培しています。この夏に近くを流れる川が氾濫して圃場に水が流れ込み、その後、圃場が土砂で埋め尽くされてしまいました。
うちの地域では過去にも何度か河川の氾濫が起きていて、そのたびに土砂を取り除く作業に住民総出で取り組んだり、苦労してきたようです。
わが家は祖父の代からの農家で、祖父も一度河川の氾濫にあったようですが、祖父も父もすでに亡くなっており、私の代になってからは初めての経験です。
近所の先輩農家さん(70代)にどうすればいいのか相談すると「天地返し(耕地の表層と深層を入れ替える)をすれば、土を入れ替えなくても栽培できるけど、大型機械を使うと圧がかかって硬い層ができてしまうので、手作業でやるしかないだろう」と言われました。
業者に頼んで土壌を入れ替えることができればいいのかもしれませんが、それにはかなりお金がかかるでしょうし、うちではちょっと無理そうです。
今回は仕方なく親戚に頼んで手作業で「天地返し」をしたのですが、また同じような被害に合ったときに同じ作業をするのは避けたいです。
「天地返し」よりももっと効率的に、圃場を再生する方法はないでしょうか?
(群馬県・田中さん/仮名・40代)
長野県農政部農業技術課 専門指導員 Iさん
長野県農政部
土砂の量が多ければ、重機で排土する方が合理的です。場合によっては作土と混合しましょう
堆積した土砂の量、粒子(砂が多いのか粘土が多いのか)、圃場内での堆積状況(全面なのか一部なのか)などがわかれば具体的な話ができるのですが、詳細な状況がわかりませんので、いくつかのケースについて回答させていただきます。
以前の洪水時に「天地返しを手作業で行った」とのことですが、どのように作業されたのでしょうか?
プラウ等の機械は使わず、手作業で行ったということでしょうか。
元の土に対して堆積土が厚すぎる場合には、完全な手作業だけでは天地返しが上手くできません。
そのため、もし堆積した土砂の量が多いなら、バックホーなどの重機を使って土砂を圃場外に持ち出すほうが合理的かと思います。
圃場に重機が入れば、ご指摘のように表面土壌は硬くなります。
またロータリーでは表層土壌しか柔らかくできませんので、作土の直下に形成される耕盤層も破砕することができる、プラソイラやサブソイラ等をかけるのが良いかと思います。
一方、シルト(砂より小さく粘土より粗い砕屑物。沈泥)や、粘土主体の土砂が堆積している場合には、堆積土の厚みが数センチ程度かつ元の土壌と土壌粒子のサイズが大差ないようなら、ロータリーで混ぜ合わせれば作土の一部として利用できるかと思います。
長野県では令和元年の台風19号によって千曲川が氾濫した際、下流域の堆積土はシルトや粘土成分が多く、肥料成分が相当量含まれていたため、そのまま作土の一部として使うことが可能でした。
しかし厚く堆積してしまった場合には、「防除等の管理作業に支障をきたす」という理由から、多くの圃場で排土作業を行いました。
砂や礫主体の土砂が堆積してしまった場合も同様で、前述の台風19号の際に砂や礫が主体の土砂が堆積した千曲川上流域の圃場では、養分的な期待もできなかったことから、基本的には圃場外に排土しました。
もしその場合でも、堆積量が数センチと少なければ、大きな礫だけ除いて作土と混合し、そのまま利用できると思います。
泥なら手作業で可能ですが、ディスクハローの使用が一般的です。
原田清弘
一般社団法人 京都府農業会議 京都アグリ創生 現地推進役
泥なら手作業で可能ですが、ディスクハローの使用が一般的です
泥が流入した場合の天地返しは、小面積であれば、ホームセンターなどで購入できるサツマイモなどの芋掘りで使用する農具を使って、手作業で行うことができます。
しかし一般的には、大型トラクターにディスクプラウを装着して天地返しを行った後、ディスクハローまたはロータリーで耕運し、畝立を行い、再び野菜などを栽培します。
したがって相談者の場合は、地域でディスクプラウを所有しておられる方に協力を依頼することをお勧めします。
ただし、砂利等が多量に混入しているようなら、ディスクプラウの使用は困難です。
その場合は、ストーンクラッシャーなどで3度ほど圃場全体を耕耘すれば、砂利が微粒子になって気にならなくなるはずです。