宮崎県で米農家を営んでいます。
米の収穫時期には、稲わらをロールベールラップサイロでまとめて、近隣の牛農家に売却していました。
昔は近隣に牛の畜産農家さんが多く住んでいたため、わらが安く仕入れられるからと、喜んで購入していただいていました。
しかし、年々農家さんが減少してきて、買い手が少なくなっています。
わらを細かくカットして畑に撒き、肥料として処分する方法はありますが、米価格の低下で利益が減ってきているので、少しでも収入を増やしたいと考えています。
個人農家さんだけではなく、わらを必要としている業者さんにも売りたいと考えていますが、良い販売先や売る方法がないか教えていただきたいです。
(宮崎県・春本篤弘さん/仮名・60代)
小川繁幸
東京農業大学 准教授
付加価値の高い農産物を生産している農家への販路を開拓しましょう
稲わらの新たな販路を模索されるにあたり、いま一度、有機資源としての稲わらの価値を見直してみてはいかがでしょうか。
これまで畜産農家に販売されていたときは、きっと稲作の副産物としての価値として評価・販売されてきたのではないかと思います。
ご相談者さんのような稲作農家から見れば、稲わらはあくまで副産物でしかないかも知れませんが、稲わらを商品として見るのであれば、その稲わらでなければならない理由を見いだしていかなければ、販路拡大は難しいでしょう。
近年、有機資源の価値が再評価されている傾向にあります。
国も「みどりの食料システム戦略」を策定するなど、これから持続的な農業を展開していくうえでは、安定した有機資源の確保が重要となります。
これからの農業を展望していくためには、有機資源の循環利用を再構築していくことが大切であり、これから生じる新たな販路として、有機資源を求める農家、特に有機農業を展開する農家との連携に、稲わらの活路があると思います。
いきなりすべての稲わらを供給していくことは難しいかもしれませんが、有機資源を求めている農家、それも付加価値の高い農産物(有機農産物など)を生産している農家への販路を積極的に開拓・拡大していくことが大切です。
もし、地域の中で有機資源の循環モデルを構築することができれば、その地域の農産物にエコなブランドイメージを付与することが可能となり、地域ブランドとしての魅力向上につながるかも知れません。
農林水産省 畜産局飼料課
農林水産省 畜産局飼料課
都道府県及び農政局を通じて耕種農家と畜産農家のマッチングを行っています
日本では、年間92万トンの稲わらが、飼料として主に肥育牛に給与されています。このうち、75%に当たる69万トンが国産で、残りは主に中国などからの輸入品になりますが、輸入稲わらの価格が高騰する一方、畜産農家からは改めて国産稲わらを求める声が高まっております。
国としても、酪農・肉牛の生産基盤を強化するために、国産の飼料に立脚することが重要だと考えています。と言いますのも、輸出国で発生している家畜の伝染病や、国際社会で問題が起きた場合、商品の調達から販売までのサプライチェーン上のリスクについて、懸念する農家も少なくないからです。
他方、稲わらは水稲農家にとっては単なる副産物である一方、畜産農家にとっては大切な牛の飼料なので、求める品質等に意識のズレが起こることもあります。飼料用の稲わらは、泥が稲わらに付着しておらず、しっかり乾燥させたものであることが必要とされており、稲の茎に含まれる色素は、牛の肉質に影響するので、青みのある稲わらは畜産農家に好まれません。
稲わらを販売したいと考えている水稲農家は、酪農・畜産農家が求める稲わらの品質を理解することが、お互いのメリットにつながります。
都道府県及び農政局を通じて耕種農家と畜産農家のマッチングを行っているので、売り先をお探しの場合は、県の普及員又はお近くの農政局までお問い合わせください。
また、農水省の畜産局飼料課サイトでは、稲わら販売で成功している福岡県の「杏里ファーム」さんなどのケースも紹介しています。
稲わら収集販売が経営の柱のひとつとなった例で、当初は自ら九州域内の畜産農家等を訪問して販売先を開拓したという話です。
相談者さんにもぜひ参考にしていただきたく思います。今後とも積極的な取り組みを期待しております。