私は群馬県北部の山間で米農家をしている者です。
最近は群馬県でも、高山村や川場村といった米どころで、キャンバスに見立てた田んぼに、収穫前の稲でイラストや文字を描く「田んぼアート」がお目見えして、観光客を喜ばせています。
私も学生時代には絵を描いていたので、できることなら一度「田んぼアート」にチャレンジして、地域おこしに貢献しようかと考えているところです。
そこで質問なのですが、作品として売ったりせず、「田んぼアート」のように一定期間見せるだけでも、人気キャラクターなどを描く場合には著作権元の許可が必要になるのでしょうか?
(群馬県・瀬間さん/仮名・40代)
青森県田舎館村役場企画観光課 商工観光係
青森県田舎館村
モチーフにより著作権使用料が発生しますが、町おこしが成功すれば無償で使用できるかもしれません
田舎館村では、1993年に全国に先駆けて「田んぼアート」を始めました。
ちなみに当時はまだ「田んぼアート」と言う言葉自体が無かったため、「稲文字」と呼んでいました。
一般参加者に田植えと稲刈りを体験してもらうための「稲作体験ツアー」を企画し、古代米をはじめとした三種類の稲を使って津軽地方の岩木山を描くことからスタートして、図柄はその後2001年まで、毎年地元の名山・岩木山をモチーフにしていました。
体験ツアーが10回目を迎えた2002年以降、テーマはだんだん多岐にわたるようになり、イタリアの美術家レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた有名な油彩画『モナ・リザ』や、青森県出身の版画家・棟方志功の芸術作品などにも挑戦するようになりました。
「田んぼアート」が著作権に関係するか?という問題については、モチーフによります。
わが村の「田んぼアート」のうち、2015年の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』や翌2016年の『シン・ゴジラ』は著作権に関係する作品ですが、映画の配給元から「PRをかねて『田んぼアート』にしてくれないか?」と打診があったため、著作権使用料はお支払いしていません。
『ウルトラマン』と『サザエさん』のキャラクターについても、同様に先方からモチーフとして取り上げてほしいと売り込みがありましたので著作権料はお支払いしていませんが、こちらは著作権者の方から「こういうイメージでお願いしたい」と図案についての要望がありましたので、「田んぼアートデザイナー」がデザインを起こしました。
ほかにも、2018年には漫画家・手塚治虫の生誕90周年を記念して『鉄腕アトム』や『ブラック・ジャック』、『リボンの騎士』などの人気キャラクターを図案化しましたが、これらも代理店から打診がありまして、村から代理店を介して著作権使用料をお支払いしています。
また翌2019年(令和元年)にもNHKの人気ドラマ『おしん』を題材にしていますが、田舎館村から著作権者に著作権使用料をお支払いしたのはこの2件のみになります。
「田んぼアート」の図柄は、田舎館村の村長が会長を務める団体「田舎館村むらおこし推進協議会」が、最近のトレンドや話題性を考慮して決定しています。コロナ禍が終息した折には、ぜひ青森まで足を運んでみてください。