長崎県で養殖業を行っている者です。時折発生する、赤潮被害に困っています。ひどいときには養魚が全滅することもあり、大きな被害を受ける事も。
特に長崎県では、平地を広げることと、1952年当時の食糧難を解決することを目的とした「諫早湾干拓事業」によってプランクトンをエサとする貝類や甲殻類が減少し、赤潮へと繋がっているのではないかと地元漁師やメディアなどで言われています。
赤潮発生には、私たち人間の生活排水などさまざまな要因が重なっているのでしょうが、まったく発生しないようにするには私たち漁師だけの取り組みでは難しいと考えています。
しかし、いざ赤潮が発生すると、やはり被害を受けるので、できる限り被害を小さくしたいです。
そこで、効果的な赤潮対策を教えてもらえないでしょうか。また、被害を受けた場合に受けることができる補助金制度についても知りたいです。
(長崎県・内山伸一さん/仮名・43歳)
NPO法人イドバタ
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赤潮被害は早期に検知し、対策することが重要です
はじめに、長崎県における赤潮被害の対策と補助金制度について、長崎県水産総合研究所の資料を参考にご説明いたします。
長崎県内では、赤潮被害を最小限にするために、養殖漁場周辺海域で赤潮被害を及ぼす有害プランクトンの出現状況や水温、塩分等の水質をモニタリングしています。
有害プランクトンの増殖・集積が確認された場合は、対策として「養魚を安静に保つための給餌制限」「養殖生けすの避難」「有害プランクトンへの防除剤散布」などが行われています。
しかしながら、台風・赤潮などの自然災害や病虫害等、どうしても避けられない被害が発生した場合、損害をカバーするために養殖共済があり、国などが掛金を補助する制度もあります。
異常な赤潮被害に備えるためには、赤潮特約を付ける必要がありますが、長崎県では養殖共済の加入者は自己負担なしで自動的に赤潮特約が付けられます(特約の掛金は国と県で全額補助)。
以上のような対策や補助金制度がございますが、赤潮被害を防ぐ上で新しい技術も開発されています。
2019年1月に長崎大学、システムファイブ株式会社、KDDI株式会社、長崎県五島市は、五島市における「マグロ養殖の基地化」の実現を目的とした、IoTシステムの実証実験に成功しました。
IoTとは、モノのインターネットのことで、さまざまな「モノ」がインターネットに接続され、情報交換することにより相互に制御できる仕組みです。
これにより、海水の採水から赤潮検知、そして漁業者への通知まで従来は12時間かかっていたのが15分に短縮することができました。
実証実験以後の状況は不明ですが、赤潮対策に強力なシステムなので事業化が楽しみです。
いずれにしても、赤潮被害は早期に発生を検知し、対策を取ることが重要です。
また、赤潮被害の補助金制度は自治体や県の予算になることが多いため、最寄りの漁協や水産課に連絡することをおすすめします。