海がしけたあとに、港内に大量のモク(流れ藻)が浮いて困っています。
そのほとんどはホンダワラとヒジキのようです。
これが、スクリューに絡まったり吸水口にくっつくと大変なので、組合で定期的に除去作業をやっています。
風が弱まりモクが港内に散らばりはじめるのを見計らって、船外機船で港内をグルグル回って波を立たせ、タモを端っこに寄せてすくい取ります。
時期によっては大量のモクが集まるので、すくうのは結構な力仕事です。
こうしたモクが港内に入ってこないようにする方法はないものでしょうか?
また、回収したモクを活用する方法はないでしょうか。
(千葉県・石井利治さん/仮名・30代)
本間俊輔
株式会社水土舎主任研究員
流れ藻は周辺の藻場が豊かな証拠。肥料や飼料としての資源利用を考えてみては
漁港は流れ藻に関わらず、浮遊物を集めやすく、出しにくい構造になっていることが多いので、大量の流れ藻を集めてしまうのでしょう。
これを防ぐには、漁港の構造を根本的に変更するか、または港口に浮遊物の侵入を防止するネットなどを取り付けるような対策が考えられます。
ただ、どちらの対策も費用がかかったり、漁船の航行を阻害したりするなど、利用上の問題によって整備することは難しいと思います。そこで、流れ藻の回収や利用法について少しご提案できればと思います。
海藻は、農業分野では肥料として、また畜産や魚類養殖の分野では飼料に添加される形で利用されています。ここでは肥料と飼料への利用についてご提案いたします。
農業分野では、近年、海藻は堆肥としての活用だけではなく、バイオスティミュラント(非生物的なストレスを抑え気候や土壌のダメージを軽減することで健全な植物を提供する技術)や土壌改良資材としても注目されています。
海藻を肥料として使用する場合、海藻を生のまま、もしくは、乾燥させた後に畑に投入されたり、堆肥などと混ぜて発酵させ、ボカシ肥料として使用されたりしています。
乾燥やそのままの利用でも、堆肥やバイオスティミュラントとしての効果が期待できるため、農業を行っている地域であれば有効活用が可能なのではないでしょうか。
ただし、この海藻を肥料として利用することに関して、無償提供や自家消費の場合はとくに問題ありませんが、もし販売などを行う場合には、「肥料取締法」にそって行うようにしなければなりません。
海藻を畜産や魚類養殖の分野で利用する場合は、飼料に添加するにあたって、乾燥や粉砕などの行程が必要になります。
したがって、こうした設備への投資などが必要になりますので、取り組むのは少し難しいかもしれません。
また、流れ藻は季節的な事象かと思いますので、周年にわたって利用することが難しいことから、飼料として利用する側から問題とされることも考えられます。
ただ、「海藻で育てた○○」のような地域ブランドとしての付加価値を与えることができるでしょうから、これを売りにして魚類養殖や畜産関係に使用をすすめるような提案が可能かもしれません。
海藻の回収作業については、以上に述べたような利用がすすめば、利用する関係者にも手伝ってもらうことが可能かと思います。
現状、漁村地域では過疎化がすすんで、労働力不足が問題になっています。そういった意味でも、陸域の産業との連携を強化し、互いに協力し合える関係性を築き上げていくことも大切かと思います。
最後になりますが、流れ藻が多いということは、それだけ周辺の藻場が充実していることが伺えます。近年、全国各地で磯焼けなどが問題になっている状況を考えると、逆にそういった環境は大切にしていただければと思います。
現在行われている流れ藻の回収活動は、水産庁の補助事業である「水産多面的機能発揮対策事業」のなかで、藻場や干潟の保全活動における対策のひとつ、「浮遊堆積物の除去」に当たります。
また、その活動により生じた藻類を有効利用するための技術開発、食材加工または販路開拓に向けた活動として位置づけることで、一定の補助を受けることも可能かと思います。
しかし、こうした補助が受けられるのは、あくまで藻場や干潟の保全を目的とした活動の一環として行った場合なので、もしかするとこの補助事業を利用することは難しいかもしれません。
ですが、こういった活動は周辺の海洋環境を保全しながら、同時に漁業活動をスムーズに行える環境も整えることにつながる一石二鳥の取組みであると考えられます。
そうした重要な活動を支えていく意味でも、こうした補助制度を活用していくこともぜひ考えてみてはいかがでしょうか。