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漁業権の種類や違いを教えてください

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漁業権の種類や違いを教えてください

漁船に乗り始めたばかりの新米漁師です。いまはさまざまな技術を先輩から教えてもらっていますが、まだまだ知識が足りません。

とくに、漁業権についてはまったく知識がありません。

うちの港でも密猟者や釣り人とトラブルになることがあり、その度に先輩たちが漁業権について話しているのを聞いていますが、どんな権利で、何をするとダメなのかわかりません。

きちんとした知識を身につけておきたいので、漁業権の種類や違いについて、教えていただけないでしょうか。

馬場 治

東京海洋大学名誉教授

魚種や漁法により漁業権の種類が異なり、免許が与えられる対象や期間が異なります

漁業権の種類


漁業権には大きく分けて以下の3種類があります。

・共同漁業権
・区画漁業権
・定置漁業権


共同漁業権は、漁業協同組合(漁協)または漁業協同組合連合会(漁連)が権利を持っています。

区画漁業権と定置漁業権は、法人(漁業協同組合を含む)や個人が権利を持つことができます。


共同漁業権


共同漁業権は、各地区の漁業協同組合(漁協)の組合員が、一定の水域を共有して漁業ができる権利です。

日本の沿岸域のほとんどに設定されており、免許期間は10年です。

共同漁業の対象となる漁業は、主に採貝・採藻を行う漁業で、漁協の組合員が対象になります。

共同漁業権は、漁協のみに免許が与えられます。

共同漁業には以下の5種類があります。
・第1種共同漁業
・第2種共同漁業
・第3種共同漁業
・第4種共同漁業
・第5種共同漁業


共同漁業権の申請方法については、こちらをご覧ください
漁業権の申請方法や個人でも取得できるのか知りたい



第1種共同漁業権


海藻や貝類、定着性の水産動植物の捕獲を目的とする漁業権です。
・藻類:わかめ、もずく、てんぐさ、いわのり、こんぶ等
・貝類:あわび、さざえ、かき、あさり、しじみがい、とこぶし等
・農林水産大臣の指定する定着性動物:うに、なまこ、たこ、いせえび等



第2種共同漁業権


一定の海面で固定式刺網や小型定置網などの、網漁具を固定して営むための漁業権です。


第3種共同漁業権


一定の海面において以下の漁業を営むための漁業権が対象です。
・地びき網漁業
・船引き網漁業
・つきいそ漁業(人工的に作った魚礁に集まった魚などをとる漁業)
・飼付漁業



第4種共同漁業権


一定の海面において以下の漁業を営むための漁業権が対象です。
・寄魚漁業
・鳥付こぎ釣漁業



第5種共同漁業権


内水面において営む漁業であって、第1種共同漁業に該当しないものを指します。


区画漁業権


区画漁業権は海面で養殖業を営む漁業権のことで、陸上施設で養殖を行う場合には、適用されません。

区画漁業権は次のように分類されます。

1、団体漁業権:従来は漁協に優先的に免許を与える仕組みでしたが、漁業法改正後は既存の漁業者が水域を適切かつ有効に活用している場合は、その者に優先して免許します。したがって、漁協が適切かつ有効に活用していれば漁協に免許されます。

2、個別漁業権:上記以外の場合は、地域の水産業の発展に最も寄与する者に免許されます。

 
団体漁業権、個別漁業権の別は、利害関係人等の意見を聞いた上で、漁場の活用の現況等を踏まえて県が決定します。

漁業権の免許期間は、条件によって5年または10年です。

区画漁業権には、以下の3種類があります。
・第1種区画漁業
・第2種区画漁業
・第3種区画漁業



第1種区画漁業権


一定の区域内において養殖施設を設置して行う養殖業が対象です。
・ひび建養殖業(海苔・牡蠣など)
・牡蠣養殖業
・真珠養殖業
・真珠母貝養殖業
・小割式養殖業(ハマチ・タイなど)
・海苔・わかめ養殖業
・こんぶ養殖業
・ほたてがい養殖業
・うに養殖業



第2種区画漁業権


土、石、竹、木などを使い、囲まれた一定の区域内において営む以下の養殖業を言います。
・築堤(ちくてい)式養殖業(車海老など)
・網仕切り式養殖業


築堤式や網仕切り式などは、養殖業発展初期に多く見られた方法で、現在では少なくなっており、魚類やエビ養殖などを行っていました。

魚類養殖の場合、閉鎖的な海面(湾や入り江など)を利用するため、水の循環はそれほど良くなく、魚を高密度で飼うことができず、その分面積を大きくとる必要があります。

一方で、第1種区画漁業権に分類される小割式魚類養殖は、8~10m四方の網で囲まれた中で魚を飼うので、水が常に周りを流れているために酸素供給が豊富で、高密度で飼育できます。

そのため、現在では魚類養殖の大部分は小割式養殖が主流になっています。マグロ養殖も小割式ですが、網の規模は大きいです。


第3種区画漁業権


区画された一定の海面にアサリなど貝類の稚貝を投入し、成長を待って取り上げる養殖方法で、有明海などに見られます。

アサリは全国的に稚貝を漁場に入れて、成長を待ってから漁業者が採捕する行為が行われていますが、これは区画漁業権漁場に稚貝をまくのではなく、共同漁業権漁場に稚貝をまくので、この行為は共同漁業権と見なされます。

区画漁業権は、あくまでも個人の漁場であり、そこに投入される稚貝は個人の所有物です。

一方で、共同漁業権に投入される稚貝は、個人の所有物ではありません。


定置漁業権


定置漁業権は大型の定置網漁業を営む権利で「大型定置」とも呼ばれます。

定置網漁業は、漁具を定置する漁業で、免許期間は5年です。

定置網の種類は以下の5種類です。
・落し網類
・底・中層網
・ひさご網
・ます網類
・網えり


定置漁業権は身網(魚群を囲う袋状の網)の設置場所が最も深い所で、最高潮時に水深27メートル(沖縄県は15メートル)以上の定置漁業などを営む権利です。

第2種共同漁業との違いは、身網の設置される水深が異なることです。

定置漁業権は、経営する漁業者に漁業権免許が与えられます。これを個別漁業権と言います。


漁業権がないと漁業はできない?


漁業権がなければ漁業ができないということはありません。

漁業権以外に認められている漁業としては以下の3種類があります。
・許可漁業(大臣、知事の許可)
・委員会承認漁業(委員会の指示)
・自由漁業(漁協の組合員)



許可漁業


許可漁業とは、農林水産大臣または知事の許可を得て行う漁業です。

農林水産大臣の許可漁業は漁法が特定されており、知事許可漁業は基本的に各都道府県の知事がその管轄海面の実情に応じて定められます。


委員会承認漁業


委員会承認漁業とは、都道府県に設置された「漁業調整委員会」から承認を受けて行うことができる漁業です。


自由漁業


自由漁業とは、漁業免許や許可がなくても、自由に行うことができる漁業のことを言います。

しかし、自由漁業とされているのは竿釣りや手釣りなどのごくわずかな漁業だけです。

一般市民が竿釣りなどができるのは、竿釣りが自由漁業とされているからです。

しかし、竿釣りが自由漁業であっても、撒き餌の使い方などについては県の規則があります。

漁業権の範囲についてはこちらをご覧ください
漁業権の範囲はどうやって調べればいい?どこで、どの魚を獲っていいの?



このお悩みの監修者

馬場 治

東京海洋大学名誉教授

漁業管理の制度や漁業経営、水産物流通など、水産業の社会経済的側面に関する教育や研究に携わり、水産関係の各種委員会委員も務める。

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