千葉県八街市で稲作をメインに、冬場は野菜作りもしている60代農家です。
毎年毎年、台風、集中豪雨、長雨、異常気象で災害が頻発しています。
カラ梅雨や逆の長雨、猛暑などに加え、土地によっては、大雪による被害も相当なものだと聞きます。
千葉県でも、2019年の台風で農業の被害は約700億円という膨大な影響を受けました。
加えて、東日本大震災や熊本地震のような大規模な震災による被害にも備えておかなければと考えています。
経営者として、万が一の時に頼れる「農業共済」や「収入保険」制度についてはひと通り知識を持っているつもりですが、農作物以外の設備や、他所の農家に損害を出してしまった場合など、それらでは賄えない部分もあると思います。
そうした多様なリスクにも対応する民間の農業保険商品には、どのようなものがあるでしょうか?
(千葉県・若林浩人さん/仮名・63歳)
木下 徹
農業経営支援研究所
民間保険会社に多様なビジネス保険はあるが、国庫補助のある「農業共済」で十分
「農業共済」や「収入保険」のように農家の収穫減や収入減に対応する民間の保険であれば「天候デリバティブ」でしょうか。
こちらは、冷夏や暖冬などにの影響による減収を補償するものです。損害保険では、風水害などによる損害額が確定すると保険金が支払われますが、天候デリバティブは、設定された異常気象が発生すれば補償金が支払われます。
収入を補うもの以外では、民間の保険会社には農業に限らず、ビジネス保険としてさまざまな保険商品があります。例えば、お客や取引先などへの賠償保険や出荷品の回収費用をカバーする保険、従業員への労災補償、貸し倒れ損失に対する保険などです。
また「変わり種」としては、情報漏えいリスクに対するものや、ドローン(無人航空機)に対する保険などもあります。興味があれば、それぞれの会社へ問い合わせをすると良いでしょう。
質問者さんの希望に合う保険は、建物設備やその中の機材、商品に関する損害補償だと思いますが、これらは国庫補助のある「農業共済」で多くが補填されるので、民間保険を検討する必要はなさそうです。
さらに、これらの保険は、大規模農業法人など向けで、個人事業主や中小法人には必要ないかもしれません。天候デリバティブも法人対象の保険です。
「収入保険」にしても「労災保険」にしても、公的な保険は民間の保険では扱えないような低保険料・高補償の保険なので、しっかり整っている分野では、民間保険が少なくなります。「収入保険」では、基本的に損失部分の9割が保証されるので、それを上回るような保険商品は民間では難しいでしょう。