秋田県の米農家です。数年前に主人を病気で亡くし、現在は40代の息子が後を継いでいます。
生産組合に所属しており、うちの地区の組合員は40代(息子)から80代まで8人。研修会や座談会などで意見交換したり、肥料を共同購入するなど、協業で米を生産しています。
亡くなった主人が危惧していたのですが、高齢化と後継者不足で、数年後には組合員が2~3人まで減ってしまうかもしれません。
このままでは近隣地区との組合合併も避けられないかと思います。
そんな中、息子が「組合をやめたい」と言い出しました。
というのも、組合の組合長は1年ごとの持ち回り制で、JAの資料を配布したり、注文を取りまとめたり、組合長会議へ出席したりと、雑務がとても増えるのです。
また、このまま組合員が減り続けると組合長をやらなければいけない機会も多くなるので、面倒だと言うのです。
これまで助け合ってやってきたのに、息子が組合を脱退したら申し訳なくて、亡くなった主人にも顔向けできません。
私は反対していますが、本人の意思は変わらないようです。脱退するデメリットや生産組合のメリットを説明できたら息子を説得できると思うのですが……。
(秋田県・川本さん/仮名・60代)
原田清弘
一般社団法人 京都府農業会議 京都アグリ創生 現地推進役
改善を図ってから脱退を検討してみてはいかがでしょう?
生産組合とは、協同組合を機能別に分類したもので、中小生産者が生産手段の購入や加工、販売などを協同で行う組合のことを言います。
代表的なものに、農業協同組合(農協/JA)などがあります。
相談者さんのご子息が所属している生産組合は、定款などを定めた「農業法人」でしょうか。それとも規約等により活動されている、法人格を有さない「任意組織(農家組合)」でしょうか。
こちらでは、集落における任意組織として話を進めます。
一般的に、任意の生産組合を脱退した場合のメリットは、規約などに制約(制限)されず、自由に活動できることがあげられます。
たとえば、組合の事業活動(組織力・販売力の強化、出荷方法や規格の改善、研修会への参加など)に賛同する必要もありませんし、もちろん組合長としての雑務とも無縁です。
一方、デメリットは、生産組合は農業協同組合の下部組織としても機能しているため、行政や農業協同組合等からの支援が受けられにくくなります。
また、事業活動(資材等の購入、販売先、価格交渉等)すべて自ら行わなければならなく、コスト(時間、経費)が大幅に増加することが想定されます。
つまりどちらかというと、生産者というよりも、販売主として農業と向き合わなくてはならなくなります。
近年、農業協同組合そのものから脱退する若手の農家さんも増えていますが、よっぽどの販路を構築してからでないと今後の経営が厳しくなるのは目に見えています。
加えて、組合員と疎遠になり地域活動にも影響を及ぼすことが懸念されます。
それでもどうしても生産組合を脱退したいというのなら、組合長やJA、地域からの理解と信頼を得てから行動に移すべきです。それでなくても閉鎖的な農業の世界。孤立しては成功は望めません。
まずは生産組合の中でめんどうだと思われることを話し合い、改善を試みることを強くおすすめします。
例えば、文書の配布や伝達が面倒ならば、携帯電話のLINEアプリでグループを作成して情報を共有したり、組合長会議についてもコロナ禍で普及したオンライン会議という方法もありますよね。
若手ならではのIT技術と発想力を活かして、アナログな農業世界に改革を起こせば、めんどうもずいぶんと改善されると思います。